【割安・割高】
そもそも株式投資において「割安」「割高」とは何でしょう。
同じ品質・分量の商品をA店では90円、B店では110円で売っていたなら、A店のものは割安、B店のものは割高といえます。
しかし、株の銘柄はそれぞれ異なります。つまり、品質が違うわけです。そのため、品質が違う銘柄を比較するための「モノサシ」が必要となってきます。
そのモノサシはいくつもあり、たとえば利益や会社が持っている財産(資産)や、配当利回りなどです。
しかし、利益水準も業種や会社の規模によって大きく変わります。そこで重視したいのが「1株あたり」の価値です。
大企業でも株価が200円や300円なのに対し、新興企業で規模も利益も小さいのに株価が数十万円もするのは、発行済み株式数に大きな違いがあるからです。(P.30)
→株価だけで判断しない。一見額面が高くても将来の成長性を含めると、割安ということもある。
【スクリーニング機能で銘柄を検索】
会社の業績や各種の指標は、ネットで検索できます。口座を開設している証券会社のHPで確認しましょう。
その際、一つひとつの会社ごとに指標をチェックする方法もありますが、全上場企業の指標ごとのランキングも見ることができます。これを「スクリーニング機能(銘柄条件検索)」といいます。
あらかじめ目をつけている銘柄がないときは、自分が重要視している指標で検索してみましょう。たとえばPERなら「低PER」ランキングで検索すると、有望な銘柄が出てくるかもしれません。(P.38)
→SBI証券のサイトでスクリーニングできる
【PERは業種で水準が異なる】
一般的にオールドエコノミー(昔からある産業)は、PERは低く、IT関連銘柄やバイオ関連銘柄のような新興企業は、PERが高い(=割高)傾向にあります。
これは現在や一年後といった近未来の業績ではなく、もっと先々の業績が大化けすることを期待しての株価です。
PERでも業種ごとに水準が異なるので、同業種内でのライバルと比較することが大切です。(P.40)
【個人投資家に有利な点】
ファンドは、たくさんの銘柄を所有しなければなりません。むしろ個人投資家のほうが、銘柄数を限って、それに集中できるので、有利になるはずだとリンチ氏はいっています。
(P.58)
【出来高と株価】
株価と出来高の関係を見ると、一般的に、
・「出来高が増えれば、株価は上昇」
・「出来高が減れば、株価は下落」
といえます。
チャートで確認してみても、株価が「山」を形成しているポイントでは、出来高が増えているケースが多くなってきます。
株価が上げ続け、出来高が急増したところでは「そろそろ天井だ」と判断し、売りのポイントだといえるでしょう。
【市中の一次情報で株価が予想できることもある】
有力な情報は、なにも財務諸表などの小難しい数字を読み解くことばかりから得られるのではありません。
決算公表によっても株価は動きますが、公表される数値を予測することも可能だと、リンチ氏は断言しています。
「町に行って、ドーナツを食べることが、株式の基礎的調査のはじめの一歩になると気がつかない投資家が多い」
リンチ氏のいいたいことは、有望な銘柄の情報は、必ずしもディーラー室のPCにあるのではなく、スーパーマーケットの店頭にあるかもしれないということです。
もし、目をつけていた企業の新商品が、飛ぶように売れたとなれば、その企業の株は「買い」になります。
この情報は、新商品発売直後の財務諸表などには掲載されません。
つまり、お客が商品を現場に居合わせた個人投資家だけがつかめる情報がそこにあるわけです。(P.110)
→「ウォールストリートよりもメインストリート」という名言がある。
【ツレ安は買いのチャンス】
株価下落の理由はいろいろあります。
株を購入した企業そのものには問題がないのに、同業他社が不祥事を起こし「ツレ安」となったときなどは、一時的な下げとなる確率が高いものです。そんなときは、ホールド、あるいは買い増しするナンピン買いのチャンスかもしれません。(P.116)
【ナンピン買いのタイミング】
ナンピン買いするかどうかの判断は、ファンダメンタルズだけでなくチャートで、底値を確認することも重要です。下げの途中で買うのはリスクが大きすぎるからです。
「大きく下げたから、そろそろ下げ止まるだろう」という甘い判断は損失を拡大させます。
少なくとも、下降トレンドから横ばいトレンドに移行してから買い出動しましょう。
横ばいトレンドから上抜けしたところでナンピン買いしても、遅くはありません。(P.118)
【市場は将来を見据えて動いている】
株価は「情報」によって大きく動きます。
とくに企業の業績にかかわるニュースに、株価は敏感に反応します。
しかし、好業績につながるニュースがあれば株価上昇、といかないケースも多々あるので注意しなければなりません。
(中略)
株価は「現在」の状況より「未来」がどうなるかで動く習性があるからです。
たとえば、2012年末、民主党の野田首相が衆院解散を表明したとたん、株価が上昇し出しました。これは明らかに「未来」に対する期待から株が買われたからです。その後も、安倍内閣の「アベノミクス」に期待が集まり、株価上昇に弾みがつきます。
アベノミクスに対する評価は後世に譲るとしても、この批判は的はずれ。そもそも市場は、将来を見据えて動いているという事実を理解していない発言です。(P.126)
【金利と景気・株価】
一般的に不景気になると、企業の設備投資に対する意欲が低下するなど、お金に対する需要が減ります。そのため、日本銀行は景気を刺激させようと金利を引き下げ、企業にお金を借りやすくさせて、市中に流通するお金の量を増やそうとするのです。
すると、銀行預金の魅力が薄れるので、資金はもっと魅力的な金融商品に向かいますを
その一つが、株式市場です。市場は景気悪化を先読みして、株価は十分に下がっています。そこに資金が流れ込み、「不景気の株高」という現象が起こります。そうして、今度は景気が上向きに転じるのです。
【景気を察知する指数】
株式市場に影響を与える経済指標は、たくさんあります。
しかし、取り扱いに注意しなければならない点もいくつかあります。それは、何度も述べてきたように「株式市場には先見性」があるということです。
「いい数字」とは、失業率が下がり、企業が人をできるだけ多く雇用としようとする動きです。つまり景気が上向き、経済が活発化しそうな動きです。
雇用が増えれば、全体の所得も増え、消費増につながり、結果として企業業績も上昇。株価にも好影響が出るはずです。
ところが「いい数字」が発表された瞬間に、株価が下落することも珍しくありません。
これは、市場が予想していた数値が「もっとよかった」ため、生じた現象です。
市場関係者は「いい数値」として、ある程度具体的な数値を予測していたのに、発表された数値が、その「予測」を下回ってしまったため、市場関係者の間に失望感が広がり「失望売り」が膨らんだのです。(P.134~135)
【日銀短観】
「景気」は、株価にもっとも大きな影響を与えるマクロの要素です。この景気の動向を探る景況感調査に「日銀短観」があります。
正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といい、調査月(3月・6月・9月・12月)の翌月に日本銀行が発表します。
内容は、日銀の金融政策担当者が、企業の経営者に景況感を問い、その調査結果をまとめたものです。
「売上高」「雇用者数」「借入金」といった「計数調査」のほか「生産」「在庫調査」「設備投資」などの「判断調査」が行われ、数多くの経済指標のなかで、信頼度が高く、株式市場に与える影響は大きいものとなっています。(P.136)
→日銀短観には業況判断指数が掲載されており、これは景気が良いと答えた会社の構成比(%)から悪いと答えた会社の構成比(%)を引いたもの。プラスだと景気が良い、マイナスだと悪いということ。
【景気動向指数】
景気の予測や現状がどうかの分析に利用されるディフュージョン・インデックス(DI)や、景気動向の大きさ・テンポなどを量的につかめるコンポジット・インデックス(CI)など、いくつもの指数があり、先行系列、一致系列、遅行系列に分かれています。(P.136)
【国内総生産】
国内で新しく生産された付加価値(商品やサービス)の総額を「国内総生産(GDP)」といいます。このGDPの伸び率は、そのまま経済成長率に相当します。伸び率が高いほど経済が活発ということになり、株価にとって好材料です。
一年ごとの数値のほか、三か月ごとの速報値が内閣府によって発表されます。多数の経済予測機関から予測値が発表されるなど、国の経済の見通しを測る目安として重要視されています。この予測値と、実際に発表された数値の乖離にも注目しましょう。(P.138)
→内閣府HP「国民経済計算」から閲覧可。
【鉱工業生産指数】
鉱業と一部の製造業の生産量を指数としてまとめた数値が「鉱工業指数」です。鉱工業は国内総生産に占める割合が高いため、景況感を測る指数として重視されます。
およそ五〇〇品目の鉱工業製品について、1ヶ月間の生産量を調査して求めたもので、たとえば、自動車やパソコンなどの製品の製造数が増えれば、指数は高くなり、景況感が良くなったと判断します。GDPなどと比較して、速報値が高いところも重要視されます。
経済産業省が毎月作成し、速報は翌月末、確報は翌々月の中旬に公表されます。(P.138)
→経済産業省HP「統計」から閲覧可。
【消費者物価指数】
小売物価統計調査の小売価格の平均から個別の指数を作成し、家計調査と合わせて全体の指数を出します。
国民の生活水準を示す指標の一つで、日銀の金融政策の判断材料にも使われます。年金なども、物価変動に応じて給付額が見直されますが、その指標にも使われます。
→総務省統計局HP「統計データ」から閲覧可。
景気に敏感な職種の人々ー具体的には、タクシー運転手、コンビニなどの店長、娯楽産業の従業員などに協力してもらい、調査します。
三か月前と比べた景気の現況、二~三か月後の景気の先行きなどを5段階評価で回答してもらい、その内容を分析、指数化します。
鉱工業生産指数に三か月ほど先行するといわれるほど、重要な指数です。(P.140)
→内閣府HP「統計情報・調査結果」から閲覧可。
【完全失業率】
労働力人口とは、15歳以上の従業者、休業者、完全失業者を合計したもの。完全失業者とは「仕事をしたいけれど、仕事がない人」です。
完全失業者が上がれば、それだけ景気が悪い証拠にもなります。所得も減り、消費にも悪影響がおよび、結果として企業業績にも悪影響が出てくるわけです。
日本の場合、人員整理は最後の手段であるため、世界水準のなかでは景気に敏感でないとされています。この指数は、景気動向指数に遅れる指数として採用されています。(P.172)
【有効求人倍率】
求人倍率が1.0を割っているということは、仕事を探している人の数に、求人が追い付いていない状況です。
有効求人倍率が高ければ、企業がより多くの働き手を探している状況で、経済の調子がいいことを示しています。
企業の新規採用は景気に敏感で、景気動向に近い動きを示します。(P.142)
→厚生労働省HP「統計情報・白書」の「各種統計調査」から閲覧可。