ねこみんの投資生活

ふつうの塾講師が適応障害をきっかけに投資を勉強していくブログです

【読書57冊目】決算書の比較図鑑 矢部謙介

川崎フロンターレの収益構造】
jリーグ 配分金は、 jリーグでの成績に応じて jリーグから配分される資金です。川崎フロンターレ は、2017年、2018年 と jリーグを 連覇しているので、この配分金の割合が大きくなっています。これには、 daz N が jリーグの放映権を獲得した 2017年から、優勝賞金 や配分金が大幅に引き上げられたことも影響しています。(ただし、コロナ禍の影響を考慮し、2020年、2021年 シーズンについては 上位チームへの理念 強化配分金を一旦停止することとなっています。)
また、同じく 収益に占める割合が大きい その他には、物販などによる収入が含まれています。川崎フロンターレといえば、川崎浴場組合連合会とのコラボから作られた 優勝シャーレ(皿)のイラスト入りの「フロ桶」を優勝セレモニーで掲げ、サポーターに販売するなど、地元に密着したユニークな企画を実施していることで有名です。こうした企画と連動した物販を行うことで、高い 収益を上げているのです。 また、費用面で言えば、原価率(=売上原価÷営業収益)、販管費率(=販管費÷営業収益)ともに、低い水準で抑えることができているのも特徴的です。チームの好成績を背景に、バランスよく得た営業収益をベースとして、チーム人件費や経費などもコスト管理に成功していることが、川崎フロンターレが高い収益性を実現できているポイントだと言えます。(P.26)
→地元愛が収益にも直結している理想形。
 
【PLの比例縮尺図の作り方】
①グラフの縦軸をダブルクリックして、「軸の書式設定」で「軸を反転する」に☑をつける
②棒グラフ部分を右クリックして、「データ系列の書式設定」から「要素の間隔」を0%にする
③グラフをクリックして、「グラフのデザインタブ」から「グラフ 要素を追加」→「 データラベル」→「中央」を選択
④グラフ中のデータラベルの数字をダブルクリック し、「ラベル オプション」の中の 系列名に☑をつける
⑤軸や凡例などの不要な要素を削除し、好みの書式に整えてタイトルを入力する
(P.42)
 
【SPA】
FR が採用しているのは、 SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel、製造小売とも呼ばれます)型と呼ばれる ビジネスモデルで、自社が企画 生産から関与して販売まで行う形態になっています。 SPA 型の場合、自社のオリジナリティを前面に押し出した製品規格が可能になります。そのため FR では、機能性などの強みを訴求する製品を作り、しかも 原価率を低く抑える(高い粗利益率を確保する)ことができているのです。
一方当店しまむらでは 卸売業者から商品を仕入れて販売する 仕入れ 型のビジネスモデルを採用しています。仕入れ 型の場合、 SPA 型 に比べて 卸売業者に対して支払う マージンが必要になるため、原価率が高くなる傾向があります。したがって、しまむらの場合には薄利多売のビジネスモデルを構築する必要があります。それを実現する仕組みの一つが、「売り切れ御免」のポリシーと高度な 店舗間物流の仕組みです。在庫で売れ残りが発生すると、店舗では値引きをして 売り切らなければなりませんが、こうした 売価の変更は収益性を圧迫するため、売り切った商品については 追加発注を行わない方針としています。(P.53)
 
【在庫量を最適化するメリット】
在庫量を最適化するメリットは当然 大きく2つあります。1つは、売れ残った最高処分するための値下げ販売をしなくても良いことです。値下げ販売は、企業の収益性を圧迫しますが、その必要がなければ、高い水準の利益を上げることができます。そしてもう1つは、在庫に投じる資金が少なくて済むということです。在庫を多く保有するということは、それだけの在庫を仕入れるためのキャッシュが必要になります。保有する 在庫が少なければ、それだけの現金を他の投資に回すことができるわけです。したがって、在庫の最適化は 資金効率の向上につながります。
(P.73〜74)
ニトリは物流センターの整備等の取り組みにより、在庫回転期間が非常に短く、資金効率の良さが高い収益性に繋がっている。
 
【百貨店型からショッピングセンター型へシフト】
丸井の小売事業における売上収益の内訳を 2016年3月期と2020年3月期で比較すると、「商品売上高」「消化仕入売上高(純額)」が大きく割合を落としていることがわかります。消化仕入れとは、店頭にある商品を自社 在庫とせず、メーカー在庫のままにして、販売された段階で仕入れと売上を計上する、百貨店で見られる 販売形式です。
この消化仕入れには、商品在庫を百貨店が保有する必要がないというメリットがあるのですが、その一方で メーカーに在庫責任を負わせるため、仕入れ値が高くなる傾向があります。メーカー側としては、その在庫責任に見合うだけの価格上乗せを求めるからです。そのため、消化仕入れにおける百貨店の利益率は低くなります。あるいは、一定以上の利益率を確保しようとすれば、百貨店での売価は必然的に高くなります。また、百貨店サイドが品揃えの主導権を取りにくく、消費者のニーズに柔軟に対応するのが難しいという問題点もあります。三越伊勢丹HDに代表される従来型の百貨店の売り上げは伸び悩み、業績が厳しくなっているのは、こうした 商慣行による部分も大きいのです。
その一方で、丸井の小売事業における売上収益の中で存在感を高めているのが、賃貸収入等です。このことからわかるのは、丸井の小売事業は、いわゆる「百貨店型」から「ショッピングセンター型」にシフトしているということです。メーカーから商品を仕入れて販売するのではなく、テナントに対して自社物件の店舗区画を貸し出す業態に転換することで、安定的な売上収益と利益を上げようというのが、マルイの小売業としての方向性だと言えます。その結果として、賃貸事業では喧嘩がほとんど 計上されないために、丸井の原価率は低く(粗利益率は高く)なっているのです。
(P.82〜83)
ラゾーナ川崎ららぽーともショッピングセンター型で利益を出しているのだろう。
 
伊藤忠商事の特質】
三菱商事、三菱物産、住友商事 などの 旧財閥系商社の場合、資源関連ビジネスへの投資割合が大きいのですが、非財閥系の伊藤忠商事では、資源以外(非資源)の割合が大きくなっているのが特徴です。そのため、この中で資源系ビジネスに打撃を受けた財閥系商社に比べて、伊藤忠商事の業績は粘り強さを見せています。実際、最新の2021年3月期決算の最終損益(親会社株主に帰属する純損益)では、三菱商事が前年比 67.8%減の1,726億円、三井物産が前年比14.3%減の3,355億円、住友商事は過去最大の赤字(−1,531億円)であったのに対し、伊藤忠商事では前年比19.9%減と現役ではあったものの 4,014億円の最終黒字を確保し、総合商社のトップに立っています。(P.94)
伊藤忠商事は子会社にファミリーマートを抱えるなど生活消費財関連のビジネスも手広く行っている。
 
サイゼリヤの計画生産】
サイゼリヤでは、主力製品であるハンバーグとミラノ風ドリア のために、オーストラリアに自社工場を設立し、そこで ハンバーグや ホワイトソースを生産するなど、ローコストで料理が提供できる仕組みを構築しています。また、野菜の使用効率を上げるために、野菜の種の開発までも行っているのです。こうした製造直販を実現するためのキーワードとして、サイゼリヤは「全店直営」と「ベーシック商品」による計画生産を挙げています。全店直営 だからこそ 日々の需要を掴むことができます。そして、ベーシック 商品を長く 提供し続けるからこそ、計画的な生産を行うことができ、価格と品質の両立ができるというわけです。以上のような取り組みにより、サイゼリヤは食材 玄関を抑えるとともに、自社構造による加工で店舗における学校調理の手間を軽減し、人件費を圧縮しています。売上原価率は36%と、一般的な外食産業の水準 (30%前後)からすると やや高めですが、売上高人件費率( =従業員給与・賞与÷売上高)は24%と低水準に抑えられています。(P.101)
→食のSPA
 
任天堂が堅実な財務基盤を維持する理由】
任天堂は、 Switch、 Wii 、 DS といった大ヒット ゲーム機と、それに付随するゲームソフトによって上げてきた大きな利益を内部留保し、それを 現預金や 有価証券 といった 運用資産として保有することで、極めて強固な財務基盤を構築している企業であると言えます。
こうした決算書の特徴から見える 任天堂の財務に対する姿勢は、極めて安全志向です。なぜ任天堂は、このように 安全性を追求しているのでしょうか?
その答えは、任天堂の過去の業績の振れ幅の大きさにあります。ここで取り上げた 2020年3月期の売上高は1兆3,090億円でしたが、その4年前の2016年3月期の売上高は5,000億円強と、半分以下でした。さらにさかのぼってみると、2009年6月期には売上が2兆円に届く勢いだったのです。このように 売り上げが大きく増えた理由は、 DSやWiiといった過去のゲーム機が大ヒットした 一方で、その後継機種である 3 DS や Wii U が不振であったためです。実は 任天堂では、こうしたヒット商品の有無によって業績の大きな変動を繰り返してきました。ゲーム産業はリスクが高く ヒット商品が生まれれば大きな売上と利益を生み出しますが、ヒット商品が出なければ 売上や利益は大きく落ち込みます。こうした業績変動に耐えられるように、任天堂では多くのキャッシュを保有しているのです。また、ファブレス型のビジネスモデルを採用しているのも当然 売上が落ち込んだ時に余剰生産設備を抱え込まずに済むようにするためです。(P.134〜135)
 
【新しいソニーの収益構造】
ソニーについても、10年前の決算書と現在を比較してみましょう。 PL から見てみると、2010年3月期には 営業利益が320億円であったのに対し、2020年3月期では8,450億円を稼ぎ出しています。売上原価や 販管費のコスト削減が済み、利益を稼げる体質になったためです。両者では事業セグメントの分け方が違うため、単純な 比較はできませんが、2010年3月期ではコンスーマープロダクツ & デバイスや、ネットワークプロダクツ&サービスなどの主力事業のセグメントが赤字だったのに対し、2020年3月期では ゲーム&ネットワークサービスが2,380億円の黒字になったことに加えて、イメージング&センシング・ソリューション(半導体)事業が2360億円の黒字になるなど、ソニーは様々な事業で利益を生み出せるようになったことがわかります。例えば、ゲームにおいては サブスクリプション(定額課金)サービスである「プレイステーションプラス」が、半導体事業では画像センサー 事業などが安定して利益を生み出すことができるようになりました。(P.185〜186)
ソニー銀行など、金融事業にも進出している。