ねこみんの投資生活

ふつうの塾講師が適応障害をきっかけに投資を勉強していくブログです

【読書22冊目】投資信託失敗の教訓 成功の秘訣は「相場を予想しない」 福田猛

【資産運用を「継続」するには理論や哲学が必要】
資産運用は、知的作業である前に精神的な作業です。2017年にノーベル経済学賞を受賞したのはシカゴ大学リチャード・セイラー教授でした。受賞理由は「行動経済学の理論的発展に貢献した」ことです。
行動経済学を簡単に言うと、次のようになります。
 
「人間は非合理な行動をする」
 
これを資産運用に当てはめると、長期投資が重要だとわかっていても、短期売買をしてしまう、そんなことがよく起こるのです。
米国では、古くから行動経済学が重視されてきました。ここに日本との大きな差があったのです。
非合理な行動をしないためには、精神力が必要になります。精神を支えるために理論や哲学が必要になります。(P.7)
→何事も成果を上げるには技術や運が要るが、継続して成果を上げるには理論や哲学が要る。
 
【フルインベストメント(フル投資)】
その意味するところは、ファンドの資産(資金)をフル(full)に投資する。つまり、現金で持っていないで(現金比率をできるだけ抑え)、ファンド資産の100%近くまで証券を組み入れるという基本姿勢のことです。
この基本姿勢によって、株式組み入れ比率は常時9割以上を維持しているケースがほとんどです。この比率は株式市況に関係なく、常に高い比率を維持しています。
そのため、多くの個人投資家の方たちは、次のような疑問を運用会社に持つことがあります。
「運用を担当するファンドマネージャーが株式市場の下落を想定する場合、なぜ株式投資比率を下げてくれないのだろうか?」と。
その疑問に対する答えは、次のようになります。
投資信託購入者は投じた資金を増やしてほしいと望んでいるのに対して、運用会社はベンチマークを上回る運用を目指しているからです。
多くの株式投資信託の場合、何らかのベンチマーク(日経平均株価東証株価指数等)が設定されるのが普通です。読者の多くの方は、「当ファンドは日経平均株価を上回る投資成果を目指します」というような文言を見かけたことがあるのではないでしょうか?
この場合のベンチマーク日経平均株価指数となります。運用会社はこのベンチマークを上回る運用を目指すのであり(相対的な上昇)、絶対値での資金の増加を目指すわけではありません。このため、運用会社と投資信託購入者に大きなすれ違いが生じるのです。
(P.51~52)
→インデックス型のファンドは、ベンチマークとの連動が至上命題になっているのかもしれない。
 
【NISA・iDeCoが推進される理由】
日本でも非課税で資産運用ができるNISAやiDeCoが始まっています。これらを上手に活用して、長期で資産運用を続けていけば、欧米のように資産を増やすことができるのです。
日本の個人金融資産は1800兆円を超えています。これは米国に次いで世界で2番目です。
ところが、先ほどの図で見たように20年で15%しか増えていません。年平均利回りにすると0.7%です。
もし、年平均利回りがプラス1%になったらどうでしょう。1800兆円×1%で18兆円のリターンが上乗せされることになります。
日本のGDPが540兆円とすれば、18兆円は3.3%に該当します。これは、すごいことだと思いませんか?資産運用で増えた資産が消費に回れば日本のGDPを押し上げる力さえあるのです。金融庁はこの点に気が付いていて、資産運用の業界を改革しようとしています。
(P.62~63)
→少額非課税投資制度を設ける国にとってのメリットが何だったのかずっと疑問だったが、ようやく腑に落ちた。
だが、NISAもiDeCoもどちらかといえば長期投資向きの制度。市場にその運用益が出回るようになるのはかなりタイムラグがある気もするのだが、そのあたりはどうなのだろう。
 
【ゴールベースアプローチ】
ゴールベースアプローチとは、1人ひとりの将来の目標(ゴール)に向けて金融資産・不動産・保険などの資産全体を総合的に管理していく方法です。
ゴールベースアプローチでは、1番儲かる商品を求める必要はありません。たとえば、今年1番儲かるアセットクラス(投資対象)は、新興国の株式かもしれません。しかし、そんな予想はしなくて構いません。
なぜなら、5%の資産運用であれば、新興国の株式は必要ないからです。もっと安全な道があります。そうやって必要のないものを排除することができるのです。
ゴールが明確になっていないと、途中の価格変動に一喜一憂することになります。たとえば、あなたが買った投資信託の運用成績が市場平均(インデックス)に負けると、売却したくなるかもしれません。(P.89)
 
【ゴールは変化するもの】
ゴールを設定したら、達成するまで見直さないというものではありません。人生設計におけるゴールは変化していきます。たとえば、転職をした、子どもが生まれた、親の介護が必要になった…など生活環境が変わることもありますし、世の中の環境変化であなたの目標が変わることもあります。
ゴールを設定するときには、自分の将来をシミュレーションして考えるわけですが、計画通りにならないのも人生です。その意味で定期的にチェックをすることも大切です。
目標が変わると、戦略も変わります。変わることを前提にして見直していくのです。ライフステージが変わったタイミングで見直すのもいいのですが、つい後回しにしてしまいがちになります。
それを防ぐために定期的にチェックする習慣をつけて、目標とのミスマッチを防ぐのです。できればアドバイザーとともにチェックをするといいでしょう。(P.94~95)
 
【途中で売買することによる機会損失】
S&P500は年平均11.11%※の上昇をしているにもかかわらず、投資信託で運用している投資家が得ているリターンは年平均3.69%でしかありません。
なぜこんなことが起きるのでしょうか?
これは途中で売買をしてしまうために、機会損失が生じているのです。つまり、相場環境を予測して投資しているからです。「もっと上がる」と思って高値で購入したが、相場下落時に怖くなって安値で売ってしまった、最近では日経平均株価が20年ぶりに高値だからいったん売却して、少し安くなれば買い戻そうと思ったけれど、その後もどんどん上昇して買えなくなった、と事情はいろいろですが、どれも結果として機会損失につながりやすい行動です。(P.102~103)
プロスペクト理論そのままの行動。こうした人間の心理を踏まえて自身の行動を見直すためにも、行動経済学を勉強してみよう。
1984年1月1日~2013年12月31日の平均
 
分散投資が上手くいかない場合】
株式のほうが債券より価格変動が大きいので、債券の保有比率を高め、株式の保有比率を下げて、株式と債券を同時に保有していれば、分散効果が出ました。しかし、実際には円ベースで見たとき、先進国株式も先進国債券も下落しています。
本来であれば、このときもセオリー通りに資産分散していれば値下がりは回避できたのですが、実際は先進国債券もマイナスになっています。
これはなぜでしょうか?
理由は為替です。日本から投資をするには、円を外貨に交換しますので、為替レートが影響します。外貨を円に戻すときも同じです。リーマンショック前後では円高になりました。金融危機の際は、円は安全資産として買われる傾向にあります。結果的に円高になるケースが多いのです。
リーマンショックの際も円高になったために、本来はプラスであった先進国債券が日本の投資家にはマイナスになってしまったのです。
ここからわかる教訓は、
米国人と同じような資産運用は、そのまま日本人には通用しない
ということです。(P.114~115)
→値動きの相関性が高いものに分散をしても意味がないことは理解できるが、よく言われる株式と債券の組み合わせでも損をする場合があるとは。投資とは奥が深い。
 
 【投資信託の下がりにくい戦略】
①相場が下がりそうなときには、ファンドマネージャーが株式を売却して現金部分を増やし、また上昇しそうなときに株式を買ってくれる。
ファンドマネージャーや運用チームの銘柄選定力が高い。
③銘柄を分散をしすぎず、集中投資をしている。
(P.121)
→中長期で見ると、1993年~2013までの間にTOPIX100社中65社の株価はプラス。きちんと銘柄選択ができるファンドなら、アクティブでも利回りが期待できるということ。アクティブだからと最初から選択肢から除外してしまうのは、機会損失がになりそう。
 
【各証券に値動きの相関性がある背景】
巨大化した銀行、ヘッジファンド投資銀行等があらゆる金融資産を24時間体制で取引しています。もはや金融取引に国境という概念がなく、金融の世界では文字通り「世界は1つ」になっています。
裏返せば、特定の国の危機・トラブルが一瞬で世界中へ伝播するリスクを高めています。リーマンショックはこのことを世界に証明してしまいました。
リーマンショックの始まりは、米国内で急増した低所得者向け住宅ローンの焦げ付きでした(サブプライムローン)。この住宅ローンが証券化され、世界中の金融機関に保有されていたのです。
米国の生保、ドイツの地銀、日本の信用金庫等が積極的にこれを購入していました。
本来は米国内で生じたローカルな金融問題のはずでしたが、グローバルな金融取引を通じてあっという間に世界へ伝播しました。
世界中の金融機関が互いに疑心暗鬼になり、世界の金融取引が同時かつ完全に機能停止に追い込まれました。これがリーマンショックです。(P.136)
→値動きに相関性が出やすくなっている背景にはグローバルな金融取引がある。
 
【☆資産運用の公式】
資産運用の成績=価格×量
(P.140)
→価格が下がっても、買った量は減らない。
 
【価格が下がると量を確保できる】
一括投資では、投資した後に価格が下がると、ハラハラドキドキします。AとBを比較すると、一括投資するならAのほうが好ましいと言えます。
積立投資では毎月同じ金額を投資していきますので、価格が下がると量をたくさん購入できます。Bのような値動きをすれば、こんなふうに思うはずです。
「価格が下がったからたくさん買える!」
一括投資では価格が下がることはマイナスですが、積立投資ではプラスになるのです。
つまり、一括投資と積立投資とでは発想が真逆ということです。
ここで、先ほどの公式を思い出してください。資産運用の成績=価格×量です。
積立投資なら価格と量の2つの要素で資産運用の成績が決まるので、価格が下がっても量が増えれば、成果を受け取ることができます。
ところが一括投資では、最初に量が決まってしまう(量が固定される)ので、価格で勝負するしかありません。価格が上がれば成果を手にできますが、価格が下がれば損失を被ります。(P.142~143)
→長期間の積立投資は量への投資である。相場が下落したときは、むしろおいしい状況だと理解しなければならない。
 
【参照点依存性】
「気温15度」といっても真夏の気温15度は「寒い」と感じますが、冬場の気温15度は「暖かい」の感じます。私たちの感覚は絶対的なものではなく、基準となる参照点と比べて物事を判断してしまいます。こうした心理を参照点依存性と言います。
予定利率の非常に低い保険商品に加入されている方に、なぜ加入したのかを確認したところ「預金より利率がいいから」。その保険が必要かどうかではなく、預金金利を参照点として保険が良く見えてしまったのでしょう。
預金金利を参照点にすればどんな金融商品でも良く見えそうなものです。(P.197~198)
 
【株式や債券は長期で見れば期待リターンはプラス】
民間企業は自分たちで努力して利益を上げるための活動を続けます。世界中の株式や債券への長期分散投資は、「期待リターンがプラスの資産」への投資であり、資産形成や資産運用に適した資産ということになります。
これを理解しておかないと、運用はうまくいきません。一喜一憂する短期投資から長期投資を理解するためには、期待リターンの意味を知る必要があります。株式や債券は期待リターンがプラスの資産なのです。(P.235)
→プラスサムとはこういうこと