ねこみんの投資生活

ふつうの塾講師が適応障害をきっかけに投資を勉強していくブログです

【読書52冊目】生涯投資家 村上世彰

村上世彰のライフワーク】
企業にとってのお金は、人間の体で言うなら 血液だ。血液の流れが滞ると、身体全体に悪い影響が出る。企業が成長のために投資をしたり、投資家が新しい事業に投資をするには、いずれもお金の流れが 潤滑 であることが大切なのだ。にもかかわらず日本の上場企業には、使う 当てのないお金がたくさん 蓄えられていた。この「遊休資産」を活用していくことが、企業の価値向上につながるという意味で、株主としてのコーポレート・ガバナンスの重要な課題であり、自分のライフワークとなっていった。
そもそも 投資とは何かという根本に立ち返ると、「将来的にリターンを生むだろうという期待をもとに、資金(資金に限らず、人的資源などもありうる )をある対象に入れること」であり、投資には必ず何らかのリスクが伴う。しかしながら投資案件の中には、リスクとリターンの関係が見合っていないものがある。それを探し、リターン>リスクとなる投資をするのが 投資家だ。
私はこのリスクとリターンの関係を、「期待値」と呼んでいる。期待値が大きくないと多くて金銭的な投資する意味がない。そこを的確に判断できることが、優れた投資家の条件だ。期待値を的確に判断するためには、数字だけではなく、その投資対象の経営者の支出の見極め、世の中の状況の見極め 等、実に様々な要素が含まれる。(P.11)
 
【上場の意義はあるか】
私は自分の投資先に対して、一緒に MBO をして 非上場化するという提案を繰り返し 行ってきた。私が投資する企業は、現預金をたくさん 保有していたり、財務状況もよく、銀行からの借り入れ 予約もあって、直接金融で資金を調達する必要のない企業がほとんど なので、上場している意味が見出せないからだ。さらに当店株価が長年 低迷しているような会社は、 MBO によって 株価に一定のプレミアムをつけ、株主に売却の機会を提供することもできる。これは、株主にとっても望ましいことだと考えていた。
しかしこのような企業に非上場化の提案をするたび、「確かにあなたの言うことは 一理あるが、上場していることによる信用力がなくなるのではないか」とか、「取引先との関係が維持できない」などの理由で断られてきた。(P.25)
MBOマネジメント・バイアウト、経営者が中心となって自社株を買うことで非上場にすること。
 
【コーポレート・ガバナンス】
コーポレート・ガバナンスとは、投資先の企業で健全な経営が行われているか、企業価値を上げる=株主価値の最大化を目指す経営がなされているか、株主や企業を監視監督するための制度だ。根底には、会社の重要な意思決定は株主総会を通じて 株主が行い、株主から委託を受けた経営者が株主の利益を最大化するために経営をする、という考え方がある。経営者と株主の緊張関係があってこそ、健全な投資や企業の成長が担保できるし、株主がリターンを得て社会に再投資することで、経済が循環していくメリットがある。日本でも コーポレート・ガバナンスの意識を高めることが、日本経済全体の健全な発展のために必要だと、その当時から私は強く信じていた。(P.31〜32)
 
【期待値による投資】
私の投資スタイルは、割安に評価されていて、リスク度合いに比して高い利益を見込めるもの、すなわち 投資の「期待値」が高いものに投資することだ。投資判断の基本はすべて「期待値」にある。色々な投資案件において、極めて冷静に分析や研究をして、自分独自の「期待値」を割り出している。例えば、100円を投資する場合の「期待値」の計算方法は、次のようになる。
・0円になる可能性が20%を、200円になる可能性が80%であれば、期待値は1.60(0×20%+2×80%=1.60)
・0円になる可能性が50%を、200円になる可能性が50% 出れば、期待値は1.0。
・0円になる可能性が80%、200円になる可能性が20% 出れば、期待値は0.4。
期待値 1.0を超えないと、金銭的な投資する意味がない。この「期待値」を的確に判断できることが、投資家に重要な支出だと私は考えている。ちなみに多くの投資家は、0円になる可能性がある程度(20%以上)ある場合は、投資をしない。また、負ける確率が5割以上と考えた場合も投資をしない(例えば、5回投資して2勝3敗以下と予想される場合)。このように、リスクが高い場合や勝率が低い場合には投資を避けるのが普通だが、「期待値」と勝率は別の概念だ。勝率が低いと言われる場合でも、自分なりの戦略を組み立てることで、勝率は変わらなくても、期待値を上げることはできる。(P.60〜61)
 
【食事代当てゲーム】
私は家族で食事に行くと、よく「食事代当てゲーム 」をする。至ってシンプルなゲームで、レストランに行った時に際に食事代がいくらだったかを当てるゲームである。家族はそれぞれに予想値を発表するが、他の参加者とは 500円以上の差をつけた金額で申告しなくてはならず、最終的には予想金額が実際の金額に近かった参加者が、賞金をもらうことができるというルールにしている。
家族でこのゲームを行う時には、私を含め子供たちも、まずはメニューを見て、自分が頼まないものであっても、できる限り価格を記憶するようにしている。そして食事の会計の直前、じゃんけんで順番を決めて、注文した食事の総額の予想をそれぞれに申告する。ここで、申告する予想金額は「他の参加者とは 500円以上の差をつけなくてはならない」というルーがあるため、自分が思った金額を申告するだけではなく、すぐに他の人によって申告された金額と、自分が進行する金額によって、自分より後に申告する人たちの予想金額に一定の制約を課すことができるのだ。だからそれぞれに、いくらと発表すれば自分の予想金額から他の人の予想金額を離し、自分の予想金額は実際の金額に近くなる可能性を高めるかを考えて申告する。私は教育方針上、子供達にものの値段と、それに対する食事の質やサービスの質との天秤を頭の中で考えさせるいい機会だと思っているし、自分がいくらと予想するか、相手がいくらと予想するだろうか、などと周りを見渡し考えることは、将来的により正確な期待値を導き出す下地を作ることにつながっていると考えている。私がいかに 期待値というものを重要視しているか、お分かりいただけるだろう。(P.63〜64)
 
【鉄道事業の利益構造】
鉄道事業は、基本的に赤字にならない仕組みだ。鉄道事業法鉄道営業法という法律の下、必ず利益が出る運賃設定になっている。同時に公共性の高い事業ゆえ、利用者を保護する目的で、事業にかかるコストを無制限に運賃に転嫁できない決まりもある。鉄道事業法の第16条2項は、鉄道会社の設定する運賃の上限について、国土交通大臣が審査した上で認可を行うと定めているのだ。
要するに 鉄道事業 は、よほどおかしな 設備投資や 経費の計上を行わない限り、必ず利益を生み出す。ただし生み出せる利益の範囲は限られている、ということだ。鉄道会社をこうした特殊なコア事業を運営しつつ、多くの駅や線路の周辺に所有してきた広大な土地を利用して、不動産事業を軸に、デパートやホテル 事業も展開している。どの鉄道会社も、収益の内訳を見ると、鉄道事業の割合は次第に低くなっていることがわかる。(P.142)
 
企業価値を自分の目で見極める】
どんな案件でも同じだが、私は 投資先の不動産を見に現地へ足を運んだり、運営しているレストランへ 食べに行ってみた りと、その価値を見極めるために自分自身で動く。西武鉄道に関しても、有価証券報告書の分析をベースに、保有不動産の登記を行った上で現地へ行ったり、使用ホテルの稼働率や状況を自分の目で確かめるため、ロビーに長い時間座って観察した。西武電車に乗って遊園地にも行ってみた。電車の車両は 新規投資が行われていないようで古く、遊園地 も少しさびれていた。ただし資産の中で売るべきものを売り、追加投資すべきところには積極的に投資をしながら、全体的に有利子負債を減らし、資産効率を改善すれば大きな利益を上げることができると考えた。再建にかかる ファイナンスにも協力したいと思っていたし、事業のポイントを絞って経営資源を投入することで、西部 グループの価値を本来あるべき姿に戻し、さらに成長させることができると、絶対的な自信が湧いてきた。(P.147〜148)
 
【日本企業はそもそも割安】
日本企業のコーポレート・ガバナンスへの対応の遅れは、株式市場の成長において、数字としてはっきり 現れている。日本の株式市場の規模は、およそ500〜600兆円。アメリカの株式市場の規模はおよそ2000兆円 だから、日本の3〜4倍の規模となっている。
しかし上場している企業数は、いずれも二千数百社と対して変わらない。違うのは 株価純資産倍率(PBR)だ。日本のTOPIX企業の平均の PBR が1から1.3倍程度なのに対し、米国の S&P500の PBR は3倍弱となっている。このPBRの値を市場全体に当てはめてみると、大雑把な計算だが、日本の上場企業の純資産と米国の上場企業の純資産は、ほぼ変わらないことが分かる。
これは純粋に、同じ規模の純資産を保有する企業であるにも関わらず、日本企業の価値は株価に反映されていないということを意味している。日本の企業が将来的に、現在の資産 以上の価値を生み出すと期待されていない、と言い換えることもできる。
(P.211〜212)
→日本企業はその価値に対してそもそも割安といえる。
 
【伊藤レポート】
2012年から第2次安倍政権は、日本経済の復活に向けて、企業の国際競争力を高めるためには収益力の向上が必須であり、そのために コーポレート・ガバナンスを強化するという構想をスタート。翌年、アベノミクスの3本目の矢である「日本再興戦略」が閣議決定された。
投資家のためのスチュワードシップ・コード、企業のためのコーポレートガバナンス・コートが制定され、その2つのコードをつなぐ位置づけで二〇一四年に「伊藤レポート」が発表された。一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄教授が座長を務めた、経済産業省の「持続的成長への競争とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」プロジェクトにおける、1年間の議論をまとめた最終レポートだ。「企業と投資家と、企業価値と株主価値を対立的に捉えることなく「協創(協調)」の成果として持続的な企業価値向上を目指すべき」という概念を示し、「中長期的に ROE向上を目指す「日本型ROE経営」が必要」だとした上で、「8%を上回るROEを最終ラインとし、より高い水準を目指すべき」と、具体的に数値目標も掲げている。(P.217〜218
→株主還元を進める企業が、これを機に少しずつ増えてきている。
 
【資金の循環が国の発展を促す】
資金の循環を促す きっかけとなるのは、まずは企業がコーポレートガバナンスコードに則り、投資や株主還元を行って手元資金を放出しながら、余分な手元資金や銀行からの借り入れで賄った資金を、昇給 や 新規雇用へ積極的に回すことだ。その結果、新たな仕事が生まれたり、リターンを受けた投資家が 次の投資先を探したり、昇給や仕事を新たに得た人々がお金を使うようになる。こうして契機が動き始めて市場を活性化してくると、個人も銀行に預金することだけでなく、株式投資を行ったり、不動産へ投資したり、という新たな動きが生まれる。その動きの一つひとつから、新たな税収が生まれる。この税収の増加が歳入と歳出のギャップを縮めていき、しばらくはこの縮まった分で借金の返済が進む。借金の返済がすれば、歳出における国債費の比重が減少し、その分を将来への投資となる文教及び科学振興費などに回す好循環が可能になっていくのだ。(P.255〜256)
 
村上ファンド事件の真相】
私のファンドマネージャーとしての人生は、2006年にインサイダー 容疑で逮捕された時に幕を閉じた。「儲ける」という行為を否定されてしまったため、投資に限らず、何の事業もできない状態となってしまった。一体この先、毎日何をして生きていけばいいのか、日本のために これから何ができるのか、と失意の中で考えてきた。
私がどんな容疑で逮捕され、裁判で有罪となったのか、当地でさえ 正確に理解していた人は少ないだろう。「あれだけ目立ったあげくに捕まったのだから、たくさん悪いことをしてお金を貯め込んだせいに違いない」と思った人がほとんどではなかったか。
ライブドア堀江貴文氏が私に言った「ニッポン放送の株式を5%以上買いたい」という趣旨の言葉がインサイダー情報に該当するとされ、その情報をもとに株の取引を行って利益を上げたという 容疑で、私は逮捕されたのだった 。しかし実現可能性がほとんどないような情報が「インサイダー情報」にあたるのだろうか。さらに、言葉のイメージの問題ではあるが、私は会社の内部から情報を得たわけではないので、「インサイダー取引を行った」と言われることには正直、非常に違和感がある。
ファンドマネージャーだった当時の私は、投資先の経営者や 関係者と話す際に、自分自身にも社員にも「インサイダー情報は 絶対もらわないように」と十分すぎるほど注意を払っていた。万が一、相手が何か 口を滑らせてしまったら即座に取引を止め、その情報を公開するように請求し、公開されるのを待ってから取引を再開した。ルールを守ることについては、人の何倍も気を使ってきた。
あの時の堀江氏の話は、ニッポン放送内部の未公開情報ではないし、当時のライブドアの財務状況を考えれば実現にはほど遠かった。言わば 彼の「夢」や「願望」にすぎず、インサイダー情報に該当するなど 予想もしなかった。該当すると思っていたら、すぐに対応したはずだ。実際にその後、堀江氏が「外国人から株を買いたい」と具体的な依頼をしてきた時点で、私は即座にニッポン放送株の取引を停止するよう社内に命じている。
だから私は裁判で、「誰かがどこかの会社の株を5%以上買いたいと言っているのを聞いたら、その誰かの経済状況や実現可能性にかかわらず、インサイダー情報とみなされるのか」という点を争った。しかし 5年もかかって確定した判決は」公開買付等の実現を意図して、公開買付等 またはそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り、公開買付等の実現可能性があることが 具体的に認められることは 用意しないと会するのが相当である」というもの。
誰かが大量に株を買えば、対象企業の株価に影響を及ぼす可能性がある。だからこうした情報も、インサイダー情報と同じ処罰の対象にするという位置付けだ。将来から振り返ってみた時、 私にだけ適用された判例になるのではないか、単なる「村上バッシング」だったのではないか、とさえ疑ってしまう。「あの時いったい何が起きていたのか」と未だに思う 。10年経った今でも、何度考えてみても、違和感を拭えずにいるのだ。(P.261〜263)
→世論の「空気を読んだ」検察のパフォーマンスだったのではないか、という見方もある。自民党幹部を立件せず曖昧にお茶を濁した昨今の対応とは雲泥の差だ。さすが「犬察庁」と揶揄されるだけのことはある。

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【読書51冊目】決算書✕ビジネスモデル大全 矢部謙介

【決算書を読み解くにはビジネスへの理解が不可欠】
決算書は、いわば 会社にとっての「通知表」のようなものです。下の図に示すように、経営者は、決算書を見ることで自分たちのビジネスが成果を生み出しているかどうかを把握しています。また、こうした決算書のデータから、経営上の問題点などを分析し、次の打ち手や ビジネスモデルを考えるために活用しています。
つまり、決算書とビジネスはそれぞれが独立して存在しているのではなく、相互に結びついていると考えるべきです 苦点 経営の結果は決算書へと反映され、決算書を見た経営者はそれを元に次の手を考えているわけです。ですから、決算書の数字だけを見ていてもその意味を掴むことはできません。決算書を読み解くためには、その会社が手掛けているビジネス そのものに対する理解が必要不可欠なのです。(P.1〜2)
 
【ドラッグストアの収益構造】
一般にドラッグストアでは、食品の原価率が高い(粗利益率が低い)ため、安い食品を目玉として集客し、 医薬品や化粧品で利益を上げる構造になっていると言われます。しかし、コスモス薬品は売上の主軸の食品です そのため、コスモス薬品の原価率は80%と高いのです。
では、原価率が高いにも関わらず、なぜ コスモス薬品はツルハHDと同水準の売上高営業利益率5%を確保できているのでしょうか。
その理由は、「ローコストオペレーション」の徹底にあります。先に述べたように、コスモス薬品の販管比率はツルハHDに比べて低くなっています。原価率の高さを販管費率の低さでカバーしているのです。
ドラッグストアの販管費の多くを占めるのは 人件費です。そこで、売上高に占める人件費の割合(法定福利費を除く)を試算して比較すると、ツルハHD が10%であるのに対し、コスモス薬品では7%にとどまっています。また、コスモス薬品では決済 手数料のかかるクレジットカードや QR コード決済による支払いにもほとんど 対応していません。
コスモス薬品では、このような積み重ねによりローコストコスモス薬品では、このような積み重ねによりローコスト 経営を徹底し、低価格を売りにしたディスカウント業態でありながらも売上高営業利益率5%という 収益性を確保しているのです。(P.72)
 
【セリアが雑貨中心の理由】
セリアにおける2021年3月期の有価証券報告書における仕入れ実績と販売実績から、商品区分別の原価率を簡易的に試算してみると、雑貨 が 57%であるのに対し、菓子食品では 75%と高くなっています 。したがって、100円ショップの原価率を引き下げる上では、食品の割合は低い方が有利になります。雑貨の商品力を高めるとともに、食品の売上割合を引き下げてきたことが、セリアの高い収益性に結びついていると言えそうです。(P.80)
→他にも直営店での売上の割合が高いこと(フランチャイズ店への卸売りの場合は原価率が高くなる)や、スケールメリットといった要因も、セリアの利益率の高さに貢献していると考えられる。
 
ニトリの物流システム】
ニトリHD はSPAをさらに深めた「製造物流IT小売業」を自認していると言います。また、2020年11月20日付の日本経済新聞朝刊によれば、(2026年頃までの)5年間で国内の物流施設やシステムに対し 最大で2000億円を投資し、全国に自社物流センターを新設する予定で、物流センターと店舗の在庫情報を一元化する計画だとされています。2022年2月期の有価証券報告書においても、北海道、埼玉県、愛知県、兵庫県に物流センターを新設する計画が記載されています。こうした取り組みが、物流コストの削減や、棚卸資産回転期間の短縮に貢献していると推測されます。
(中略)
このように在庫を最適化するメリットは主に2つあります。ひとつは、売れ残った 在庫を値下げして処分する必要がないため、原価率の上昇を抑えることができる(粗利益率を高くできる)こと、そして もうひとつは 在庫に投じる資金が少なくて済むため、資金効率の向上につながることです。(P.111〜112)
→工場や物流センターを保有しているため、有形固定資産は大きいが、その分棚卸資産を圧縮するとともに、原価率や販管費率を低く抑えて高い収益性を確保している。
 
【製薬メーカーの原価率が低い理由】
新薬主体の製薬メーカーの場合、新薬を特許により独占的に生産することができるため、薬価は高く設定されます。そのため、新薬の原価率は非常に低くなります。医薬品メーカーの生命線が大型新薬の開発の製品にかかっているのは、こうした理由があるからです。
その一方で、新薬特許の有効期限は出願から20年程度とされています。特許切れ医薬品には 薬価の低いジェネリック医薬品後発医薬品)が登場するため、大型新薬が特許切れを迎えると、医薬品メーカーの収益性は大きく低下してしまう リスクを抱えています。医薬品メーカーの業績を見る際には、こうした点に注意しなければなりません。(P.116〜117)
 
【海外事業が中心のJT
JT では 度重なる海外企業の M & A と IFRS国際財務報告基準)の適用を経て、事業別営業利益のほぼ 7割を海外タバコ事業によって稼ぎ出す グローバル企業へと変貌を遂げました。
そんな JT は、2022年3月10日に ロシアでの事業に関して「新規の投資及び マーケティング活動について 一時的に停止」すると発表しました。発表時点ではロシアに保有する4つの工場の稼働 や 約4000人の従業員の雇用を維持する方針を明らかにしていますが、今後の事業環境が大幅に改善しない限り、ロシア 市場における製造を一時的に停止する可能性もあるとしています。加えて、JTウクライナで約1000人の従業員を抱えており、製造を含むオペレーションは停止している状況でした。
業績に対する懸念により、 JT の 株価(終値)は進行前の2022年2月18日における2344円から、進行後の2022年3月11日時点では 2012円まで下落しました(P.145)
→海外事業が国際情勢によって影響を受ける事例。JTもその例に漏れなかったとは。
 
【堅牢な財務でリスクヘッジするサカタのタネ
サカタのタネによれば、「育種10年」という言葉もあると言います。育種の間には、気候変動をはじめとした様々な環境変化が起こるため、種の開発がうまくいかないことがあります。育種は自然環境のリスクと隣り合わせで行われているのです。同社の坂田宏社長も種の開発は「無駄の繰り返し」だと述べています(日経ビジネス2020年7月20日・27日号)。
サカタのタネが財務的な安全性を追求しているのは、こうしたリスクに対応できるようにするためなのです。(P.159)
サカタのタネ自己資本比率は85%前後で推移している。
 
【CF計算書はごまかしが利きにくい】
CF 計算書は粉飾決算を見抜く上でも重要な武器となります。粉飾決算を行っている企業では、 PL はきれいに見えるよう お化粧されていますが、 CF 計算書には苦しい台所事情が現れてしまうのです。
なぜなら、預金の金額をごまかすことは難しいからです。会計監査を行うにあたって、会計監査人は必ず取引のある金融機関に対し、預金残高を直接確認します。 そのため、仮に現預金の残高を改ざんするような粉飾決算を行ったとしても、すぐに会計監査人に発見されてしまいます。(P.211〜212)
 
【営業CFがマイナスの企業に注意】
粉飾決算 企業や 倒産企業の営業活動によるキャッシュフロー(営業 CF )は、マイナスになっていることが多くなります。こうした会社では、そもそも 本業がうまくいっていないためです。営業 CF がマイナスであるということは、事業を継続すればキャッシュの流出が続くことを意味しています。こうなると、経営は危機的な状況ですから、投資活動によるキャッシュフローを(投資 CF )や財務活動によるキャッシュフロー(財務 CF )でなんとか 資金繰りをカバーしようとします。具体的には、資産売却により資金を捻出したり、あるいは取引のある金融機関から追加で借り入れを行ったり、といった 金策に走ることとなります。(P.212)
 
【売上債権や棚卸資産による粉飾】
FOIにおいて売上債権が大きく増加していたのは、架空売上を計上する 粉飾決算を行っていたためです。売り上げが架空である以上、その売上代金は決済されませんから、結果として 売上債権が滞留し、積み上がっていくこととなります。
また、売上債権の一部を棚卸資産に付け替えたり、棚卸資産を課題計上することで 売上原価を過小に見せたりすることも行われるため、粉飾決算企業では 棚卸資産も課題になっているケースが多いのです。
(P.222)
 
粉飾決算を見抜く上で有用な手法として、回転期間指標を用いた分析があります。
回転期間指標とは、 BS に計上された 売上債権(受け取り手形や 売掛金)、在庫(棚卸資産)、仕入債務(支払い手形や 買掛金)が 売上高の何日分に相当するのかを見る指標です。言い換えれば 、売上債権回転期間は売上債権が現金として回収されるまでの期間、棚卸資産回転期間は在庫を仕入れてから販売するまでの期間、仕入れ債務回転期間は在庫を仕入れてから仕入れ代金を支払うまでの期間の目安となります。
架空売上の計上や 売上計上の前倒しといった 粉飾 が行われた場合、売上代金のみ入金や入金の遅れなどが発生するために、売上債権回転期間が不自然に長期化するといった形で粉飾の兆候が現れることがあります。そのため、回転期間分析は粉飾を見抜く上で強力なツールになるのです。(P.261〜262)

【読書50冊目】新版財務3表一体理解法 国貞克則

【財務3表一体理解法】
私の会計勉強法は、この 簿記・仕訳をすっ飛ばして、日々の伝票が PL・BS・CS のどこに記入されているかを追いかけていきます。例えば、資本金1000万円という取引は、 PL・BS・CS のどこに1000万円という数字が記入されるのか、現金売上の500万円はPL・BS・CS のどこに500万円という数字が記入されるのか、といった具合です。この PL・BS・CS の3つの表を一体にして勉強していくことが、私の会計 勉強法の最大の特徴です。後ほど詳しく説明しますが、 PL・BS・CSの3つの表はつながっています。この3表のつながりを意識しながら、それぞれの取引が3つの表の中でどのように動いていくかが分かれば、「目から鱗が落ちるように」会計の全体像と基本的な仕組みが理解できるようになります。(P.26)
→PLの変化はBSのどの項目とつながっているのか、CSはどうか。3表のつながりを辿って理解する方法。これまで見たどんな財務3表の説明より腑に落ちる。
 
【自分にかかる費用を売上高に換算する】
経営感覚を高める PL の見方を一つお教えしましょう。例えば、あなたが1日3万円の受講料の研修を受けたとします。あなたは会社のお金を3万円使っただけと思うかもしれませんが、この3万円の受講料をまかなうために、あなたの会社はいくらの売上高を上げなければならないでしょうか。もちろん、それは会社の収益構造によって違いますが、仮にあなたの会社の粗利率(=粗利÷売上高×100が10%)のビジネスを行っているとしたら、 3万円の受講料を賄うためには 30万円の売上高を稼ぎ出さなければなりません。つまり、あなたの3万円の研修費用は、実は30万円の売上高 に匹敵するのです。社長はそのように ビジネスを見ているはずです。このように、 PL の構造がわかっていれば、コスト感覚・経営感覚が磨かれます。
(P.42)
 
【株価が変動しても資本金は変化しない】
会計研修を行っていると、受講生から「会社の株価が2倍になったら、 BSの資本金も2倍になるのですか」という質問を受けたりします。読者の皆さんはもうお分かりですね。会社の株価が2倍になったからと言って資本金は何ら変化しません。株価が2倍になっているというのは、会社の外の株式市場で株式の価値が2倍になっているということにすぎないのです,資本金は基本的に返す必要のないお金ですし、株式市場で株価が上がる方が下がろうが BS の資本金の額は一切 変わらないのです。(P.48)
 
【BSの左右が一致する理由】
会計の本には「 BS の左右は常に一致する」と書いてあります。ところが、このように 事務用品を現金5万円で買うと、 BS の左側の現金は間違いなく 5万円 少なくなります。しかし、事務用品を買ったからと言って、借入金や資本金が減るはずはありません。こんな例を考えながら、新入社員の頃「どうして BS は 常に左右が一致するんだろう」と疑問に思っていました。
事務用品を現金で購入すると、 BS の左側の現金が減った分だけ、 PL にしようとして計上されます。それが利益を押し下げ、その利益や BS の右側と繋がっているから、常に BS は左右が一致するのです。
(P.103〜104)
→事務用品を購入して現金が減ると、その費用がPLに計上され、税引前当期純利益が押し下げられ、それがBSの繰越利益剰余金と一致するので、BSの左右(資産合計と負債・純資産合計)が一致する。
 
【財務諸表に表れない価値】
複式簿記は、15世紀にベニスの商人たちがつけた 帳簿 から始まったと言われています。論理より 感性というイメージの国、イタリア が発祥の地というのは不思議な感じがしますが、ゲーテをして「これこそ人間精神の最も立派な発明の一つだ」と言わしめたほどですから、財務諸表の仕組みを知れば知るほど、論理の一貫性とその精緻さに驚かされます。
しかし、それほど 完成度の高い財務3表にも現れないものがあります。それは、「人間」と「知恵」の価値に他なりません。人間の価値に関して 財務諸表に現れるのは、給料や 退職金の金額だけです。人間の価値は給料の金額だけで決まるものではありません。日本の会社の場合、社員同士の給料が何十倍も差がつくことはありませんが、能力があってやる 決まる人が、そうでない人の何十倍もの アウトプットを出すことは珍しいことではありません。しかし、そんな人間の能力や 情熱に関する価値は、財務諸表のどこにも出てきません。
また、特許権などの知的財産、いわゆる 知恵の価値も企業にとっては大切ですが、財務諸表には、 BS の「無形固定資産」の項目に特許の取得費用が計上されるだけです。有力特許が高額で売買された場合は別ですが、社内の研究員が開発した特許などは、基本的に本当の価値が 財務諸表に正しく反映されているとは言えません。
さらに言えば、会社というものには、製造ノウハウ や 営業 ノウハウ など 動転 過去の先輩たちが えーと 築き上げてくれた ノウハウ や 知恵や信頼といったものがたくさん詰まっています。しかし、これまた同様に、財務諸表上には全く現れてきません。将来の成長力を診断する上で欠かせない 判断材料である社員の価値や 知的財産の価値は、財務諸表の数字に現れないことをよく理解しておいてください。
(P.169〜170)
 
【粉飾のしくみ】
読者の皆さんは 「粉飾」と言われると、利益を無理やり 減らして税金を減らすことだと思われるかもしれません。もちろんそういう 操作も粉飾ですが、世の中で大きな話題になっている粉飾は、赤字を黒字に見せかける粉飾です。赤字になると困ることがたくさん出てきます。赤字が続くと、金融機関はお金を貸してくれなくなりますし、公共工事を仕事にしている会社などは、赤字が続くと応礼さえできなくなることもあります。会社がこっそり利益を増やす場合に、架空の 在庫認識を行います。これまで勉強したように、100万円の在庫があると認識すれば、原価が100万円下がって、利益が100万円増えます。もし、300万円の在庫があると架空の認識をすれば、原価が300万円下がって、利益が 300万円増えるのです。(P.189〜190)
 
【財務3表を手を動かして理解する】
私の会社(ボナ・ヴィータ コーポレーション)のホームページのトップページ(http://www.migiude.com)から、この財務3表の空白シートのエクセル版が無料でダウンロードできます。利益計算や各欄の合計計算、さらには財務3表のつながり箇所が自動計算されるようにしていますので、さらに使い勝手がよいでしょう。
ただ、注意していただきたいのは、ダウンロードできるエクセル版の財務3表の空白シートは2種類あります。弊社のトップページにあるバナーをクリックすると、本書用のものと、2016年に出版した「増補改訂 財務3表一体理解法」用のものが出てきます。本書をお持ちの方は「新板 財務3表一体理解法」用のものをダウンロードしてください。(P.225〜226

amzn.asia

【読書49冊目】景気 金利 株 物価 為替の関係がわかる マーケットの連想ゲーム 角川総一

【インフレでは10年国債の利回りから上がる】
米国のインフレ率は2020年に上がり始めたのですが、それに最初に反応したのが10年国債の利回りでした。通常どの国でも、金利の中ではイの一番に動くのが10年国債の利回りです。
(中略)
これは、多くの債券銘柄の中で10年国債が最も頻繁に、かつ大量に売買されるためです。(P.13)
→長期国債金利、短期国債金利が反応した後、政策金利が上昇するという流れ。「金利はより長いものから順次上がっていく」
 
【“金融商品収益の源泉は、すべてマーケットにあり”】
この点について、もう少し詳しく説明しておくことにします。
いささか乱暴にいうと、
「ほとんどすべての金融商品のリターン(収益)は、それがいかに複雑怪奇な仕組みからなっていようと、“株価”、“長期金利”、“短期金利”、“為替相場”、“商品市況”の相場で決まる」のです。(P.27)
→そこに景気と政策も関係する。
 
【需給バランスの原則】
キャベツが豊作で八百屋さんの店頭に山と積まれているにもかかわらず、キャベツを買い求める人が少なければ、キャベツの値段は下がります。なぜなら「値段を下げてでも売ろう」と売り手が考えるからです。
あるいは、閉店間際のスーパーマーケットの鮮魚売り場の刺し身の売れ残りは、大幅に値引きされています。
これに対して、東京中央三区(中央、港、千代田区)で大型オフィスビル建築がラッシュ状態を呈し、不動産購入が増えれば、地価は上昇します。つまり、買い手が多ければ値段は上がるのです。
以上が「需給バランスの原則」ですが、これを一言でいうと、「少数者側有利・多数者側不利の法則」となります。(P.31)
 
【物価→金利
物価が上がると、個人、法人も、消費に積極的になり、資金需要が高まる。そこで、貸出金利、債券利回りなどあらゆる金利が上がる(P.34)
→ただし近年は将来への見通しの不安から、消費を抑制する傾向が強いため物価が上がっても金利は上がりにくくなってきている。
 
【景気→金利
景気上昇=企業活動が活発になると、経済活動を支える資金が必要となり、資金需要が高まる。そのため、お金の価値である金利が上がる(P.36)
→ただし企業の多くは内部留保を抱えるようになっているため、資金調達のためにお金を借りる必要性が薄れ、景気と金利は連動しにくくなっている。
 
【景気→物価】
景気がよい時には、企業、個人とも、製品およびサービスに対する買いを増やすため、これらの価格が上昇するのが一般的。(P.38)
→近年は新興国の工業化が進み、低価格商品がラッシュ状態となっているため、物価は上がりにくい傾向にあった。(ここ1年ほどで急に上がってきている)
 
【景気→為替】
景気拡大は、輸出力(国際競争力)の強化、貿易黒字・直接資本輸入の拡大を伴い、その国の為替相場を引き上げる(P.40)
 
金利→景気】
金利が下がれば、企業の借入金コストが下がり、企業業績も上がる。住宅投資等個人消費も拡大し、企業の生産活動は活発に。景気は拡大(P.42)
→日銀の異次元緩和により景気は拡大したが、マイナス金利となる金融機関も出てくるなど、限界がきている。政府も最近は、金利上昇を検討している模様。
 
金利→為替】
金利変動は、内外の資本移動を変え、ひいては、為替相場に影響する。基本は、「金利高→資金吸収力増大→通貨価値増大」である(P.44)
→日本で金利が上がると、投資価値が増大するため円が買われ、円高になるということ。
 
金利→物価】
金利低下により、企業、個人の資金借入意欲は高まり、使えるお金は多くなる。消費が増え、受給バランスからモノの値段は上がる(P.46)
電子商取引の拡大でコスト削減が進んだことで、物価への影響が抑制されたという背景もある。
 
【為替→金利
円安が進むと予想されるときには円建ての金融商品(例:債券)への売りが増加するため、金利は上昇するというのが基本(P.52)
→債券の価格が下落するため、その分利回りが大きくなる。(株価の下落で配当利回りが大きくなるのと同じ)
 
【物価→為替】
「ある通貨の為替相場はその通貨の購買力の強さで決まる」という購買力平価説によると、物価上昇率が高い国の為替相場は下がるのが原則(P.54)
→物価上昇で通貨の価値が目減りすれば、価値が減った通貨は売られて安くなるのが当然ということ。
 
金利→株価】
金利が上昇すると、企業としてみれば借入超過部門である企業の資金コストは上がる。よって、企業業績は圧迫され、株価は下落する(P.56)
→特に金利に敏感な株を金利敏感株といい、不動産、大手商社、電力、鉄鋼、金融などの株が該当する。
 
【株価→金利
株が上がっているとき、債券は売られ株が買われる。「債券売り→債券価格下落→債券利回り上昇→金利一般が上昇」が基本(P.58)
金利を上げて債券の投資妙味を高めないと、債券を買ってもらえないため。
 
【変化は相対的に見る】
「日本の金利が下がったときには、円安になる」という基本メカニズムがあります。ところが、日本と米国の同じ1年物金利について、「日本の金利が2%から1.6%に下がった」、一方「米国の金利が5%から3.5%に下がった」ときには、相対的にみれば、日本の金利が高くなったとみるべきです。この場合は、「円高」に振れると考えられます。(P.65)
→特に為替相場が絡む場合は、彼我の経済ファクターの変化を相対的に見る必要がある。

【読書48冊目】世界一楽しい決算書の読み方 大手町のランダムウォーカー

【本業とは】
企業は、自社のルールブックにあたる「定款」を作成します。この定款の中には、企業がどのようなビジネスをするのかについて記載をする場所があり、ここに記載されたものが「本業」になります。
たとえば、リンゴを仕入れて売っているような企業であれば、定款には「リンゴの仕入販売」と記載していることでしょう。この場合、リンゴの仕入販売は本業なので売上に計上され、それ以外のビジネスから得た収益は本業以外の収益のため営業外利益に記載されます。(P.86)
 
フランチャイズという仕組み自体は、コンビニなどのビジネスでよく見られるものですね。フランチャイズ本部は、加盟店に対して商標や経営のサポートを提供し、その代わりに、加盟店はロイヤリティとして、利益の一部をフランチャイズ本部へ支払います。
つまり、「加盟店の収益は本部の財務諸表に反映されるが、負担したコストについては反映されない」という形になるのです。
その結果、コンビニ事業の損益計算書では、利益率は高く(原価率は低く)表示される傾向があるのです。
(P.96)
→売上原価の計上は、直営店の売上高に対応するもののみ行われる。費用収益対応原則。
 
コストコのビジネスモデル】
コストコが会員制であることをご存じない方もいたかもしれませんね。コストコは、仕入先から直接安価で仕入れて販売するというモデルです。
顧客は、毎年会員費を払うことで商品を原価に近い価格で購入することができる仕組みになっています。
(P.108)
→営業利益の70%が会員収入から得られたもの。
 
ドン・キホーテの戦略】
ドン・キホーテは商品販売のみですが、「驚安」を追求することで顧客の来店数を増やし、得た利益をまた「驚安」の追求に回すという経営方針です。(P.111)
損益計算書から、企業がどんな成長ドライバーを持っているか分析できる。そもそも世の中のビジネスモデルにはどんなものがあるのか、知っていることも分析するうえで有益だろう。ビジネスモデルをまとめた書籍も出ているので読んでみよう。
 
東急グループでは、小売業などを通じて鉄道沿線の開発投資を行うことで、鉄道や不動産の利用者を増やし、結果的に利益率の高い交通事業・不動産事業で大きく利益を上げられるというビジネスモデルになっているのです。(P.168)
→事業の多角化を行っている会社では、それぞれの事業がどのように収益に貢献しているか分析することができる。

【読書47冊目】行動経済学が最強の学問である 相良奈美香

行動経済学の体系】
非合理的な意思決定メカニズム=行動経済学の本質
認知のクセ
・計画の誤謬
・自制バイアス
・身体的認知
・メンタル・アカウンティング
・真理の錯誤効果
・システム1vsシステム2
・確証バイアス
・解釈レベル理論
・快楽適応
・ホットハンド効果
・概念メタファー
・非流暢性
状況
・おとり効果
・ナッジ理論
・アンカリング効果
・プライミング効果
・系列位置効果
・感情移入ギャップ
・単純存在効果
・パワー・オブ・ビコーズ
感情
・アフェクト
・ポジティブ・アフェクト
・ネガティブ・アフェクト
・拡張ー形成理論
・不確実性理論
心理的所有感
・境界効果
・目標勾配効果
・キャッシュレス・エフェクト
(P.74)
 
【システム1VSシステム2】
人間の脳は、情報処理をする際に2つの思考モードを使い分けていて、それを「システム1vsシステム2」と呼びます。カーネマンは、システム1は直感的で瞬間的な判断であることから「ファスト」、システム2は注意深く考えたり分析したりと時間をかける判断であることから「スロー」と呼びました。「認知のクセ」を生む理論のうち、最も基本となるのがこの「システム1vsシステム2」です。(P.93~94)
→システム2の方がエネルギー消費が激しい。
 
【システム1を使いがちな6パターン】
人はどんなときにシステム1を使いがちかを明らかにした研究があります。それをまとめると以下の6つのときです。
・疲れているとき
・情報量・選択肢が多いとき
・時間がないとき
・モチベーションが低いとき
・情報が簡単で見慣れすぎているとき
・気力・意志の力(ウィルパワー)がないとき
(P.97)
 
【メンタル・アカウンティング】
カーネマンとトベルスキーが発表した有名なメンタル・アカウンティングの研究は「劇場の10ドル」という研究。この実験では、被験者に以下のような質問をしました。
「あなたは、劇場でチケットを買おうとして財布を開くと、10ドル札を失くしたことに気づいた。それでもあなたは財布から10ドル出して当日券を買いますか?」
その問いには88%の人が「イエス」と答えています。一方で、今度は以下のような質問をしてみました。
「あなたは事前に10ドルの前売券を買っておいたけれど、劇場に着いたら前売券が見当たらない。それでもあなたは財布から10ドル出して当日券を買いますか?」
この問いにイエスと答えた人は46%。半分以上の人はノーと答えました。
2つの質問のどちらの場合も、失くしたお金の価値は10ドルで変わりはありません。しかし、同じ10ドルであっても、お札を落とした場合と前売券を落とした場合とでその後の行動が変わっているということは、その10ドルに対して感じている心の会計が異なっているということです。(P.102~103)
→何のためのお金か、無意識に仕訳がされていて、心のなかでは失くしたお金は劇のために使うお金とは別会計になっている。
 
【フット・イン・ザ・ドア】
行動経済学を教養として身につければ、交渉の原理原則を使いこなせます。
そこで認知のクセの一つとして紹介しておきたいのは「フット・イン・ザ・ドア(Foot in the Door)」。「小さなお願いから始めよ」ということです。誰かを訪ねていって、いきなり家に入れてもらおうとすると拒絶されるでしょう。ですから、まずは一歩、足先を入れるー。つまり、頼みごとをするなら、最初から大きな依頼をせずに小さなことから始めなさいということ。(P.126)
→これまでに例のない新しい施策を取り入れる時にも使えそう。
 
【真理の錯誤効果】
「難しい理屈はいらないよ。営業は足で稼ぐものだ。一件でも多く顧客を訪問して契約を取りなさい。私も100件ノックし続けて、最優秀社員に選ばれたんだ」
上司の成功体験は数十年前のもので、セキュリティが厳しい集合住宅も増えた現在、足で稼ぐという営業は成り立ちません。むしろ会社にいたままインターネットを使った戦略で考えたほうが、より効果的かつ効率的なことは明らかです。
しかし、毎日毎日、上司の熱いトークを聞くうちに、チームの部下たちは「そうだよな、実績のある人の意見だから正しいに違いない」と信じるようになっていく。これが私が博士課程の卒業論文でも発展させた「真理の錯誤効果(Illustory Truth Effect)」です。(P.133~134)
 
【なじみのある情報が優先される】
日常でも、「○○○だと思うかもしれませんが、実は違うのです」という話し方やマーケティングを見かけることがあります。このような場合も、時間が経つと「○○○だと思う」という情報と「実は違うのです」という情報が別の名前のファイルで保存される可能性があります。結果として「○○○だと思う」という情報が別の名前のファイルで保存される可能性があります。結果として「○○○だと思う」ことが事実として頭に残ってしまうので、気をつけましょう。(P.135)
→真理の錯誤効果で、「○○○だと思う」(=なじみのある情報)が優先的に思い出されてしまう。
 
【快楽適応】
タイムマネジメントが上手くなる一助として、「快楽適応(Hedonic Adaptation)」を知っておいて損はないでしょう。
快楽適応とは、人は何が起こっても、繰り返しベースラインの幸福度に戻るという理論です。
(中略)
しかし、なぜこれがタイムマネジメントに生きるのでしょうか?
それは、快楽適応は実はネガティブな感情にも言えるからです。つまり、人が慣れやすいのは、ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情に対してもということです。
おそらく、あなたは嫌だと感じる仕事ほど、途中途中に休憩を挟んでしまいがちではないでしょうか。しかし、このようなネガティブな感情のときは、逆に「一気に」やってしまったほうがよいのかもしれません。
というのも、その嫌な気持ちも、ずっと取り組んでいると慣れてきて、段々と感じなくなるからです。
逆に言うと、嫌な仕事を細切れにしてしまうと、その嫌な気持ちになかなか慣れることはできません。そうなると、なかなか再開できないことで時間がかかりますし、取り組んでも同じく嫌な気持ちのまま取り組んでいるので、なかなか進まないでしょう。(P.154~155)
→「一気呵成」には科学的根拠があった。
 
【単純存在効果】
電池コーナーの周りに他の客(協力者)がいないときには33%の被験者が一番高いメーカーの電池を購入し、他の客が1人いる場合は約10%増え42%もの被験者が一番高いメーカーの電池を購入しました。他の客が3人に増えると、なんと半数以上の63%が一番高いメーカーの電池を購入しました。
被験者にとって、電池コーナーの周りの客は知り合いでもなんでもないただの通りすがりであり、特にじっと見られたわけでも、何かを言われたわけでもありません。あたかも風景のようにその環境に他者がいるだけなのに、人間の行動が変わってしまいました。
これは「単純存在効果(Mere Presence Effect)」と言い、人間は他者の存在に影響を受けるという研究です。(P.178~179)
 
【過剰正当化効果を防ぐ】
内発的動機で努力している人のやる気を妨げないためにな、言葉や態度で報酬を出すこと。「ありがとう、こういう点が素晴らしかった」と丁寧に言葉で伝えたり、「動画編集を手伝ってくれて本当に助かるよ」とコーヒーを差し入れてお礼を言うなどです。
この場合のコーヒーは「報酬」ではなく、「ありがとうを伝えるもてなしの行為」「態度で示す感謝」となります。(P.181)
→内発的動機に基づく行動が、報酬を与えられることで報酬のために変わってしまうことを、過剰正当化効果という。
 
【自律性バイアスの活用】
アメリカで行動経済学を学び、現在日本企業の人事部で勤務されている方がこんな体験談を教えてくださいました。やりたいプロジェクトについて、上司に対して「これをやります」という一方的な情報共有をした結果、自分が知らないことを部下が勝手にやっているという不安や自分が頼られていないという虚しさを感じたのか、支援を渋られたそうです。そこで、彼は自律性バイアスを上手く利用して、「これをやりたいと思っているんですが、AとBどちらが良いでしょうか」という相談に切り替えました。本質的にはAとBでも良い選択肢を揃えて、上司に選んでもらったところ、上司を巻き込み周りからのサポートも受けられるようになったそうです。(P.242)
→自分の意思で決めたと思いたい性質を、筆者は自律性バイアスと呼んでいる。
 
【感情移入ギャップ】
朝、朝食を食べたばかりで元気がいっぱいだと、「今夜は忙しいけれど自炊して健康的な食事をしよう」と考えますが、実際に仕事が終わって空腹になると、ついジャンクフードを買って帰ってしまう。感情については次の章で詳しく話しますが、「未来の自分」を理想化してしまうこの状態を、カーネギーメロン大学の心理学者ジョージ・ローウェンシュタインは「感情移入ギャップ(Hot-Cold Empathy Gap)」と名付けました。(P.248)
→先送りや三日坊主が発生しやすい原因。
朝のうちに材料を買って職場の冷蔵庫に入れておくなど、決めた行動をしやすい「状況」をつくる工夫が考えられる。
 
【拡張-形成理論】
ポジティブな感情は、将来的に幸せになる上昇スパイラルの引き金となるー。これは理想論ではなく研究論文で、ノースカロライナ大学の心理学者バーバラ・フレデリクソンが「拡張ー形成理論(Broaden and Build Theory)」として最初に発表し、現在までに2万件以上の引用がされています。基本的に、ポジティブな感情は視野や思考の幅を広め、ストレスによる身体と心の不調を整えてくれます。そればかりか、打たれ強くなり、レジリエンス(精神的な回復力)も身についていきます。能力・活力・意欲が高まり、人脈や活動範囲が広がります。
つまり、ポジティブな感情は仕事の効率も質も上げ、心身のストレスを軽減させることができるのです。(P.272~273)
 
【認知的再評価】
ビシネスにも役立つ研究として知られるのが「認知的再評価(Cognitive Reappraisal)」。自分が抱いている漠然とした感情に目を向け、理解し、再評価し、もっと役立てるというものです。
ネガティブ・アフェクトは、言ってみれば「脳の中の小さな不安や不満」です。小声でつぶやかれているので注意しないと聞き取れませんが、放っておくと大きくなってしまいます。
そこでまず、脳の中のアフェクトに注意を払うクセをつけ、「脳の中にネガティブ・アフェクトがある」と気がつくようにする。次にそれを認めます。例えば「不安だな」と気がついたら、「不安だ」と声に出して言うのもいいでしょう。そして、「なぜ不安なんだろう?原因はなんだろう?」と考えます。「来週から始まる責任のあるプロジェクトに自信がないからだ」と原因がわかるだけで落ち着くでしょう。
また、そのことを再評価し、「あのような責任のあるプロジェクトを任されるなんて、期待されている証拠だ。これからも頑張ろう」と、ポジティブなアフェクトに変えることもできます。さらに仕事でミスをして落ち込んでしまっているときにも、「なんであんなミスをしてしまったのか」とずるずる悩むよりも、「いい勉強になった。次はもう大丈夫だ」と再評価するとネガティブ・アフェクトが減少するという研究結果も出ています。(P.281~282)
→「捉え直す」ことは日常的にやっていても、「認知的再評価」という学問的な裏付けのある行為だと理解してやるのとそうでないのとでは、効果も違ってきそう。
 
【ネガティブをポジティブへ】
不安や緊張というネガティブな感情は簡単に消えるものではなく、下手に「あがってなんかいない。私は大丈夫だ」と抑え込もうとすると逆効果になります。それゆえにネガティブ・アフェクトを認識し、その上で「やる気」などのポジティブ・アフェクトに変換するというグループ1の方法が良いという結論です。
(P.284~285)
→スピーチの前に「私はワクワクしている」とつぶやくグループ1と、「私は平常心で落ち着いている」とつぶやくグループ2では、グループ1の方が好評価を得たというアリソン・ブルックスの実験結果がある。
 
【現金の方が無駄遣いしない】
行動経済学では、キャッシュレスの人のほうがお金を使いすぎてしまうことがわかっています。なぜなら、キャッシュレスだとお金の決済の際の「透明性が低い」ということで、「お金を使ってしまった」という心理的痛み(Pain of Paying)を感じにくいからです。
また、いくら使ったという感覚も低く、「いっぱいお金を使ってしまった」ということに対するネガティブ・アフェクトも生まれにくくなってしまい、結果、簡単に使ってしまうのです。
逆に、現金の決済のほうが透明性が高い、つまり、リアルで目の前の商品に対する現金を手渡しすることにより、「どれだけどのように使ったか」という感覚が強くなるので、ネガティブ・アフェクトが生まれやすく、無駄遣いをしなくなります。(P.293)

【読書46冊目】「ゆる副業」のはじめかた アフィリエイトブログ ヒトデ

【必要なのは相手意識】
初心者の方は、「誰に」「何を」伝えるかを考えてから記事を書くだけで、ブログ執筆の成長スピードが段違いに上がります。絶対に、です。例えば新宿にあるおいしいラーメン屋の記事を書くことになったなら、次のように考えます。
・どんな人に読んでほしいのか→新宿でラーメンを探している人に
・何を伝えたいのか→そのラーメン屋の魅力を伝えたい。そのラーメン屋を知ってほしい。(P.105)
 
【関連する資格を取る】
「感覚的にはわかっているんだけど、いざ記事を書こうとすると難しい…」という体験をしたことはないでしょうか?これは、自分の中で言語化できていないことが大きな理由です。資格の勉強を通じて、理解が深まり、言語化できるようになっていきます。
さらに、実際にその資格を取ることで、「権威性」「信頼性」といったものが手に入ります。何の資格もない人の記事よりも、「こんな資格を持っている私が、これについて教えます」と書いてある記事のほうが読みたくなりますよね。このように「資格」には読者から信頼され、すごいと思ってもらえる効果があります。
さらに本と一緒で「資格を取ったこと自体」もネタになります。
・その資格の勉強法
・資格取得に役立つ参考書
・その資格はどんな資格なのか
(P.115)
→サイエンスについて記事を書いていくなら、理科検定や科学検定など。
 
Amazonだけでなく楽天アフィリエイトもある】
初心者の方が商品を売りたい場合、まずおすすめなのが「Amazonアフィリエイト」と「楽天アフィリエイト」を利用することです。
皆知っているアマゾンと楽天アフィリエイトです。
あなたの記事にアマゾンや楽天のリンクを張って、それをクリックした人が商品を買うと、売上の数%が報酬になるというシステムです。(P.162)
→ブログに掲載する前にブログの審査がある。Amazonより楽天のほうが審査に通りやすいらしい。