ねこみんの投資生活

ふつうの塾講師が適応障害をきっかけに投資を勉強していくブログです

【読書26冊目】マンガでわかる ピーター・リンチの投資術 栫井駿介

【テンバガー】
投資の世界では、株価が10倍に跳ね上がる銘柄を「テンバガー」と呼ぶ。「バガー」とは、野球用語で塁打のこと。それになぞらえて、1試合で10塁打を記録するほどの驚異的な銘柄を、テンバガーと呼ぶのである。
このテンバガーという言葉は、ピーター・リンチが広めたとされている。リンチは、後に株価が何倍にも上昇することを見越し、誰もまだ目をつけていない銘柄に投資して成功した投資家である。
彼はフィデリティのファンドマネージャーとして「マゼランファンド」の運用を担当し、多くのテンバガー銘柄をファンドに組み込んだ。そして、1977年からのわずか13年でファンドの資産を777倍にまで成長させたことで「伝説のファンドマネージャー」と称される。
(P.10)
 
【投資に複雑な数学は要らない】
投資の経験がない人にとって、投資とは「難しい数字と向き合いながら株価の動きを綿密に予想するもの」というイメージが強いだろう。
しかし、リンチによると「会社の資産はいくらあるのか、借金はいくらあるのか」など、小学校4年生ほどの計算知識で十分投資できるという。
そもそも、数字だけで株が成功するのであればコンピューターを使うだけで大儲けできるはずである。しかし、実際にはそれで大儲けできた人はいない。科学的な知見に則って計算しつくしたとしても、計算通りに株投資を行えるとは限らないのだ。
このことから、リンチは「なんでも数量化したがる人は株に不向き」と表現している。(P.24)
→リンチはボストン大学を卒業し、金融の学位を取得したが、大学では金融に関する講義は必要最低限に留め、歴史学や心理学、認識論、論理学など、直接ビジネスに関係しない講義を重点的に受けたという。
 
【リンチが提唱する6つの分類】
①低成長株
成長ののびしろがない大企業。配当目的で投資するのが一般的
②優良株
企業規模が大きいが①より成長の余地がある。不況時に強い
③資産株
価値のある資産を所有している銘柄
④急成長株
成長率が年20~25%の銘柄。順調に成長すれば株価も大きく伸びる
⑤市況関連株
景気の動向に影響を受けやすい銘柄。株価が上下するため、売買のタイミングが重要
⑥業績回復株
潜在的に倒産の恐れがある銘柄。業績が回復すれば株価も上昇する
(P.32)
→テンバガーを狙うなら④~⑥の銘柄
 
【株価成長率の計算方法】
当期純利益成長率(%)
=(当期純利益-前期純利益)×100/前期純利益
(P.33)
 
【PEGレシオ】
リンチによると、成長率がPERの2倍であればかなりお買い得であり、反対に、成長率がPERの半分だといずれ株価が下がるという。
この考え方を用いた指標にPEG(ペグ)レシオがある。これは、PERをEPS成長率(1株あたりの当期純利益の成長率)で割って計算されるが、大きな意味ではリンチの提唱した計算と同じ結果を求めることができる(33ページ)。
PEGレシオは、一般的な目安として、2倍を超える銘柄は割高、1倍を超えているとやや割高、0.5~1.0倍であれば割安、0.5倍以上はお買い得の銘柄となる。
ここで、リンチの考え方をPEGレシオの計算式にあてはめると、次のようにPEGレシオが算出できる。リンチが「お買い得」であるといったPERが15倍、EPS成長率が30%の銘柄は、15÷30=0.5。PEGレシオの基準と一致する。
なお、PEGレシオもPERと同様に「会社四季報」や各証券会社のホームページなどから確認することができる。(P.58~59)
 
【リンチが提唱する有望な銘柄の特徴】
注目度が低い銘柄
①おもしろみのない社名
②代わり映えしない業容
③分離独立した会社
機関投資家保有しない銘柄
⑤感心しない業種
⑥悪い噂の出ている会社
⑦気の滅入る会社
 
成長しやすい銘柄
⑧無成長産業
⑨ニッチ産業
⑩買い続けなければならない商品
⑪テクノロジーを使う側
 
自社に自信のある銘柄
⑫インサイダーの買う株価
⑬自社株の買い戻し
(P.63)
 
【周囲の人から一次情報を得る】
一般的に、どの銘柄に投資するかを検討する方法には「会社四季報」を読む、株主優待や配当に注目する、などが挙げられるが、これらの方法では同じような業種に注目してしまいがちになる。
しかし、簡単に銘柄探しの視野を広げられる方法がある。それが、キャロラインが人気商品レッグスを見つけたように、家族や友人から知らない業界の動向を教えてもらう、という方法だ。また、近年ではネットの口コミやメディアも重要になっている。
たとえば、週末の家族とのショッピングは銘柄探しのチャンスでもある。自分の買い物だけではなく、パートナーや子どもの買い物にも付き合うことで、自分が知らない業界のトレンドを把握できる。(P.88)
→彼女のおかげで、ペット業界の需要増に気づくことができた。例えば「アニコムホールディングス」はペットを家族と見なす風潮に対応してペット保険のサービスを展開しており、動物病院、ペットショップとの提携を進めて販売網を構築するなど、参入障壁も高い。
 
【リンチの銘柄選択の手順】
①めぼしい銘柄を見つける
マチュアの知識を活用したり、身近な人からヒントを得る
②銘柄について調査する
6つの分類のどれに該当するのか、業績やPER、PEGレシオ、実地調査などを駆使して確認する
③ストーリーを組み立てる
将来どのくらい伸びるのか、その成長を実現させる努力を行っているかを検討する
④ストーリーを要約する
ストーリーを90秒以内にまとめることで、より理解を深める
(P.109)
 
【90秒でストーリーを伝えるための要点】
①商品・サービス説明
注目しはじめた商品・サービスはどんなものか
②きっかけ
その商品・サービスに注目したきっかけは何か
③売上全体を占める割合
商品・サービスが業績の主力であるか
④同社の成長率は?
⑤同社のPERは?
⑥実地調査の結果
消費者目線から見た人気度や成長性
⑦懸念する点
負債額、サービスの質、ライバルの動向など
⑧のびしろのポイント
中期・長期計画の概要など
(P.111)
→③は10%未満だと影響力が少なく、30%以上であれば期待大と見なすことができる。
彼女相手に90秒でストーリーを伝えてみよう。
 
【財務状況の判断指標】
・資本金と固定負債を比較して、固定負債が25%以下であれば健全
・現在株価-(マイナス)1株あたりのネットキャッシュが小さいほど割安
(P.142)
→ネットキャッシュは賃借対照表の「現金・預金」「有価証券」の合計から「有利子負債」を除いた額。つまり、企業の手元にある借金を除いたお金のこと。
 
保有銘柄は5銘柄が最適】
リンチは、個人投資家が行う株投資については「5銘柄以内への分散投資」を推奨している。その理由は、先述の通りリスクの分散ができることだ。リンチによると、5銘柄に投資すると、ひとつは株価が大きく上昇し、ひとつは株価が大きく下落し、残りはまずまずの成果をあげるという。
仮に投資した銘柄のうち4つがテンバガーにならなかったとしても、残りの1銘柄が当たれば十分資産を増やすことができる可能性があるのだ。
もしも1銘柄にしか投資しなかった場合、まずまずの結果しか出なければ資産は微増となるだけだ。運が悪ければ、株価が大きく下落する可能性もある。
保有する銘柄数を5つに抑えることで、銘柄の管理を行いやすくなる点もメリットだ。
また、リンチによれば、観察対象として個人投資家が常に動向を追える銘柄数は8~12銘柄ほどである。この数の銘柄数であれば、大きな負担にならず、無理なく観察を続けることができる。
この観察対象は、必ずしも動向を追う銘柄=投資に適した銘柄というわけではない。
たとえば、「事業拡大を計画している銘柄があるが、その方針に不安があるため保留にしておきたい」「業績が落ち込んできているため、投資は保留にして動向を追っておきたい」といった状況の場合、様子見が必要だ。
そのため、動向を追うのは8~12銘柄、同時に保有する銘柄数は5銘柄に留めることで、調査の負担を減らし、かつ適切にリスクを分散できる。(P.168~169)