ねこみんの投資生活

ふつうの塾講師が適応障害をきっかけに投資を勉強していくブログです

【読書29冊目】株の投資大全 小泉秀希

【適正PERの目安】
だいたいの目安ですが、1株益が2倍に成長すると考える投資家が増えると、PERは15倍の2倍の30倍が適正な水準として意識され、1株益が3倍に成長すると考える投資家が増えるとPERは15倍の3倍の45倍が意識されるようになります。(P.38)
→3~5年先くらいに利益が2倍、3倍になる見通しなら、株価に反映されやすい。
 
【投資理由の明確化が振り返りに繋がる】
投資理由を明確化することも大事なことです。
投資理由を明確にしても必ずうまく行くわけではありませんが、不明確な理由で投資するよりは成功確率が上がります。
また、かりに1つの投資で失敗しても、投資理由を明確にして失敗した場合には、反省点や改善点も明確になり上達が早くなります。
そして、投資理由を明確にしておけば、その投資が失敗だった時に、「ああ、これは失敗だったな」ということに早く気付くことができますし、損切りがスムーズにできて、損失を最小限にとどめることができます。(P.52~53)
→長期株式投資さんも、上岡正明さんも、投資理由を記録していたという。売買するときは銘柄毎のブログ記事に理由を書き残していこう。
 
【投資の手順】
①身の回りから成長株を探す
飲食、買い物、スマートフォン、遊び、教育、健康、美容、住宅など、日常生活で伸びている商品・サービスはないか
②業績を見る
売上高と利益が成長トレンドに乗っているか
③成長シナリオを考える
会社の強み、成長余地、経営者の能力と意欲などから考える
④財務諸表を見る
売上高、現金・預金、有価証券などの金融資産は、どのくらいあるか
有利子負債が多すぎないか
売上原価、販売費・一般管理費などのコスト構造
営業キャッシュフローが安定して稼げているか
先行投資をしているか、その中身はどうか
⑤PERで割安さを考える
標準は15倍くらい
成長性が高い株なら20~30倍でも割安
配当利回りを確認する
業績とともに配当が長期的に増えていきそうな会社が理想
⑦株価チャートで投資タイミングを考える
長期投資には月足チャートを見る
24ヵ月、60ヵ月、120ヵ月移動平均線が長期的な押し目買いの目安
⑧景気サイクルで絶好の買い場を見極める
数年に1度の買いチャンスをとらえよう
景気が加熱している局面は慎重に
景気ウォッチャー調査・先行き判断DIなど先行指数を定点観測する
リスク管理を考える
資金分散・時間分散
投資理由の明確化
間違いに気付いたら損切りする
(P.54~55)
 
【売りは一部に留める】
利確や損切りという言葉をよく口にする人で、大金持ちになった人をあまり見たことがありません。どうしてかというと、利確は大きく値上がりする手前で売ってしまうことになるからです。10倍になるような株を見つけて投資して、その成果を得るには2倍や3倍になってもさらに保有し続ける握力が必要です。
この握力をつけるためには、株を複数単位で買って、その株が上がってどうしても売りたくなったら一部を売却するという風にするといいと思います。株価が上がれば売りたくなるのが人情だし、売らずに下がってしまったら後悔するのも人情です。そういう風に株価が上下動する中で株を保有し続けるのは大変なことです。そうした心理とうまく付き合うためにも、一部は持ち続けて、一部は売り買いする、というような工夫も大事です。
(P.60)
 
個人投資家こそ小型株に投資しよう】
個人投資家の強みを活かせるのは、なんといっても小型株です。小型株の中でも時価総額300億円以下、できれば数十億円の超小型株です。時価総額が小さい会社が画期的な商品やサービスで成長し始めた時、株価は爆発的になる可能性があります。
プロローグで紹介したPPIH(ドン・キホーテ)の1997年の事例も、当時の時価総額は100億円前後でした。それが今や1兆円超えの企業です。
時価総額が小さい会社というのは、どんなに高い成長性があってもファンドマネージャーなどプロの投資家の多くは手を出せません。時価総額が小さいというだけで、投資の検討対象にすらならないことが多いです。プロの投資家の多くは、一定以上の時価総額しか買えないルールになっていることが多いですし、現実問題として、運用資金が数千億円とか数兆円などの規模になってくると、時価総額の小さい銘柄では、投資できる金額が小さすぎて投資対象にしづらいからです。
その点、個人投資家には何の制約もありません。
良いと思う株が見つかったら、いつでもどこでも買うことができます。ですから小型株にこそ、プロが手をつけない掘り出し物が転がっている可能性がありますし、ダイヤの原石が眠っている可能性もあります。
それを堀り当てるための武器の1つが、消費者や利用者としての感覚なのです。(P.66~67)
→ピーター・リンチの発想。
 
【ペット業界の伸び】
ペット関連の支出は2015年から2020年までの5年間で約3割伸びています(総務省の家計調査)が、その中でも特に大きく伸びたのはペット保険です。2010年頃まではペット保険の加入率は1%未満でしたが、アニコムホールディングス(8715)が本格的にペット保険のビジネスを展開し始めてからは12%まで急拡大しました(2020年時点)。ペット保険の先進国の英国では加入率が約25%、スウェーデンでは約50%なので、まだ成長余地は大きそうです。
アニコムホールディングスは、全国の動物病院の半分以上と提携して、動物病院の受付でアニコムの発行する保険証を提示することで、保険金を差し引いた代金を払えばよい仕組みを作りました。それまでのペット保険は、治療費を支払った後に保険会社に保険料を請求する必要がありました。全国のペットショップの半分程度を代理店として、ペット購入時に保険の加入をすすめてもらう体制を作り上げたことも強みです。さらに、全国の動物病院からペット診療データを集め、それをビッグデータ化して分析し、それを活かしてさまざまな関連ビジネスを展開し始めています。(P.95)
→高い参入障壁を築くことに成功している。
 
廃棄物処理業界の伸び】
毎日大量に出るゴミの処理やリサイクルも社会の大きな課題であり、私たち一般の消費者も意識することが多くなりました。廃棄物処理に関する規制が厳しくなる一方で、廃棄物処理のノウハウや設備を持つ事業者は限られており、廃棄物処理という事業の付加価値は高まる傾向が続いています。事業者の努力でゴミ処理や廃棄物のリサイクルの技術やノウハウも高まっており、関連企業の多くは業績を順調に伸ばしています。
これらの中でミダックホールディングス(6564)は、最終処理場まで運営している点が強みです。2022年には、それまで同社が所有していた最終処理場の7倍もの規模の最終処理場が稼働し始めました。今後は、首都圏でも最終処理場を建設することを計画しています。最終処理場に対する需要は首都圏で特に高まっていますが、それを建設するのも運営するのも特殊なノウハウが必要であり、同社に対する期待が高まっています。(P.116)
 
【成長株探しの着眼点】
①日常生活は成長株の宝庫。まず身の回りに伸びている商品・サービスがないか見渡そう
会社四季報を株の最新カタログとしてチェックするのは、成長株探しの有効な手段
③家族、子供、友達の話もよく聞いてヒントにしよう
④外食・小売りで新勢力が台頭してきたら見逃さない
⑤ネットショッピンクは、まだ高成長が続く
⑥ゲーム、コンテンツ配信、レジャー、おもちゃなど遊び関連も見逃さない
⑦ペット関連は成長分野。今は医療や保険が伸びている
⑧フィットネス業績からも新サービスが次々と出て目がはなせない
終末医療障がい者教育、エドテック(教育向けテクノロジー)も伸び盛り
⑩キャッシュレス決済、暗号資産、ネット保険、ロボアドバイザーなど金融分野にも成長分野がある
⑪中古不動産の再生、不動産テックなど不動産分野にも新しい波が来ている
⑫リサイクル、ゴミ処理は長期的に成長が続きそう
⑬電気自動車は2030年代に向けて一大産業に育ちそう
(P.120)
 
【有利子負債に注目】
有利子負債は利子がつく負債であり、いわゆる借金のことです。有利子負債が多くても、収益が安定して稼げていたり、資産性の高い優良な資産を多く持っている場合には、それほど問題はありません。有利子負債が少ないとかゼロという場合には、経営の安全性はかなり高いといえます。また、そういう会社は余剰資産を多く持っている可能性があり、その場合には、その余剰資産を成長戦略や配当に回せば、株価が上昇する要因になりえます。
有利子負債の水準は、純利益の5倍程度ならかなり少ないほうだといえます。現状の収益力を保てるなら、5年間で返せる借金ということになります。負債には有利子負債以外にもさまざまな項目がありますが、投資家として最も注意してみるべきは有利子負債です。(P.134)
 
株式分割はその名の通り1株を2株に分けたり、1株を3株に分けたりすることです。1株を2株に分割すると、発行済み株数は2倍になりますが、株価は半分になります。投資家からすると持ち株が2倍になり、株価が半分になるので、実質的な価値は変わりません。見かけ上の株価は下がりますが、実質的に株価への影響は中立です。会社にお金が入ってくるわけでもなく、資本金も増えませんので、増資でもありません。株式分割は、株を取引する金額を小さくして売買しやすくするために行います。最低購入金額が小さくなることで個人投資家から買いが入りやすくなり、株価上昇要因になる面もあります。東証は最低売買単位を50万円以下にするように上場企業に促しています。(P.141~142)
→株式併合はその逆。
 
【四半期業績】
四半期業績というのは、3ヵ月ごとの決算で発表される業績のことです。年度の最初の3ヶ月間を第1四半期、次の3ヶ月を第2四半期、その次を第3四半期、最後の3ヶ月を第4四半期といいます。第2四半期決算は6ヶ月間の累計、第3四半期決算は9ヶ月間の累計、第4四半期決算は本決算と言い1年の累計の業績が発表されます。(P.152)
 
【実績PER】
実績PERは、直近の終了年度の確定した1株益で計算したPERです。過去3決算期の株価の高値と安値における実績PERの平均値が示されていて、その会社のPERのおおよその変動範囲がわかります。
また、PERは収益構造や財務体質などによっても評価基準が異なる面もあります。
たとえば、不動産産業のように多額の有利子負債(借金)を抱えることが多い業種の場合には、財務リスクが多い分PERが低く評価されることが多いです。そのため、PERは収益構造や財務体質が似ている同業種どうしでも比較してみることも大事です。(P.158~159)
 
移動平均線でトレンドを掴む】
株価トレンドについては2本の移動平均線がともに上向きであれば、中長期的なトレンドは上昇トレンドであると見ることができます。
そして、上昇トレンドの中で株価が一時的に下落する場面での買い(押し目買いという)のポイントとしては、これらの移動平均線の水準が1つの目安になります。12ヵ月移動平均線も24ヵ月移動平均線押し目買いの目安になります。さらに株価が下落する場合には、60ヵ月移動平均線や120ヵ月移動平均線押し目買いの目安になりますが、これらの線については、必要があれば証券会社のサイトの株価チャートなどで確認してください。
(P.160)
 
【成長シナリオを探るポイント】
①「投資する会社について、その成長シナリオを2分間語れるように」する
②成長シナリオを考えるための要素は、
1 会社の強み
2 成長余地の大きさ
3 経営者のやる気と能力、の3点で考える
③会社の強みには、商品力・製品力、ブランド力、コスト競争力、ブラックボックス的な技術やノウハウ、研究開発力、人材、設備、顧客基盤・店舗網・販売網、サプライチェーン、資金力、スイッチングコスト、ネットワーク効果地域独占、規制の壁などがあ
④成長余地については、
1 同業のトップ企業との比較、
2 国内市場での成長余地、
3 海外市場での成長余地、
4 事業領域の拡大可能性、という4点で考える
⑤経営者のやる気と能力を判断するポイントは、
1 ビジョンが明確か、
2 話が合理的か、
3 地道にやり抜く粘り強さがあるか、
4 リスクに対する意識の高さがあるか、
5 誠実か、の5点で考える
⑥リスク要因についても考える。たとえば、製品の欠陥、新技術の台頭、代替品の脅威、人材難、原材料高、競合他社、新規参入、地震パンデミック・事故、規制の導入・緩和、資金繰り、為替変動、政情不安、市場の衰退、経営者の病気や死など
(P.214)
 
流動負債に対する流動資産の比率を流動比率といいます。物語コーポレーションの場合は、流動資産131億円を流動負債123億円で割って、1.1倍となっています。一般的に流動比率が2倍を超えていれば、資金繰りの安全性はかなり高いとされていますが、業績面や財務面で特に問題なく順調に回っている企業の場合、流動比率が1倍程度の会社も多いです。
流動比率が高くても、流動資産の中身が良くなくて、業績も悪化していて金融機関も融資に消極的になっている場合には、資金繰りが悪化する場合もありますし、そうした事例も過去にあります。(P.245)
流動資産とは、現金か現金にしやすい資産のこと。流動負債とは、短期で返済予定の負債のこと。
 
2015年には、金融庁東京証券取引所がコーポーレートガバナンス・コードという上場企業の指針を出して、上場企業が最低でもROE8%以上を目安にして資本効率の向上を考えるべきだという基準を示しました。さらに、上場企業にはこれに合意するか、合意しないかを明示して、合意しない場合にはその理由も明示することを迫りました。事実上、上場企業は資本を効率的に活用する努力が迫られるようになり、日本でもROEを意識して余剰資金を有効活用するという流れが強まっています。今後も引き続き、余剰資金の有効活用をする動きは強まり、それによって株価が上昇するような動きも、いろいろと出てくるのではないかと思われます。(P.257)
→日本の企業は伝統的に内部留保が多かったが、欧米にならって徐々に資産を有効に活用する意識が強まっている。
 
【販売費・一般管理費
売上総利益から販売費・一般管理費(販管費)を差し引くと営業利益となります。営業利益は本業にかかる費用を全て差し引いて求める利益であり、本業による利益といえます。
販売費はその名の通り販売に要するコストです。広告宣伝費やマーケティングや営業部のコストがこの費用の中に入ります。
一般管理費は本社機能に要する費用です。人事部、総務部などにかかる費用がこれに入ります。今現在販売している商品・製品・サービスの開発費や改善のための費用ではなく、将来の新商品の開発のための費用は一般管理費に入ります。
このように販売費と一般管理費は商品や製品に直接かかるコストではありませんが、本業を支えるために必要な活動のコストということになります。この2種類の費用は販売費及び一般管理費というようにセットにして考えることが多く、合わせて販管費とも言います。
(P.265)
→製造費や仕入れにかかる費用は、売上原価に計上される。
 
【先行投資も一般管理費
営業利益の計算で留意しておきたいことは、成長のための先行投資としての費用をかけた場合は、その多くが販売費・一般管理費として計上されて、その分、その期の営業利益が少なくなるということです。
たとえば、研究開発費については将来に向けて行われている分は一般管理費の中に入ります。企業買収も成長戦略の一環として行われるものですが、それによって発生するのれんの償却費も一般管理費に入ります。先行投資として大量に広告宣伝費を使うことがありますがこれは販売費に入りますし、人材を増やすための採用コストも一般管理費に入ります。
ですから、成長のための先行投資をさかんに行っている会社の場合は、その分販売費・一般管理費が膨らんで営業利益が少なくなりますし、場合によっては営業赤字になってしまうということもあります。(P.266)
→のれんとは、会社の買収金額から純資産を引いた金額。800億円の純資産の会社を1000億円で買収した場合、200億円ののれんが発生する。日本の会計基準ではこれを20年以内に償却することになっている。たとえば毎年10億円ずつ償却費として計上されると、その分営業利益から差し引かれることになる。
 
【フリーキャッシュフローの実際】
一般的には「営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー」をフリーキャッシュフローと呼ぶことが多いです。しかし、「営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー」をフリーキャッシュフローと考えるのはあくまでも簡便的なものです。投資キャッシュフローは、先行投資によるキャッシュフローの支出分を差し引いているからです。先行投資を積極的にやっている会社の場合には、「営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー」がゼロ近くになったり、マイナスになったりすることもありますが、その場合には収益性が劣るとか、資金繰りが苦しいということは必ずしも言えません。
投資キャッシュフローには事業を維持するための設備投資だけでなく、事業を拡張するための先行投資も含まれているわけですが、その内訳がどうなっているのかを判断するのは難しいです。しかし、事業を維持するための費用は、おおよそ減価償却費くらいと考えていいでしょう。ですから、本当に自由に使えるという意味でのフリーなキャッシュのおおよその金額は、「営業キャッシュフロー減価償却費」と考えられます。(P.282~283)
 
損益計算書キャッシュフロー計算書のチェックポイント】
①売上高が伸びて、売上原価率や販管費率が抑えられていて、営業利益が順調に伸びているのが理想形
②売上高は伸びているけれど、営業利益が不調の場合、原因は売上原価か販管費か、その原因を探る
③売上高が伸びて、売上高総利益率が維持できていれば、収益状況は良好と判断して良さそう
④営業利益の不調の原因が販管費の場合、販管費のどの部分が増加しているのか調べる。成長戦略を加速するための費用が膨らんでいるなら、逆に今後の業績の伸びが期待できるかもしれない
⑤営業キャッシュフローが安定して大きな黒字を稼ぎ、投資キャッシュフローの赤字をカバーできているパターンが理想的。営業キャッシュフローは、減価償却費をまかなえる黒字は欲しいところ
キャッシュフローは1年ごとのブレがある程度出てしまうことがあるので、3年や5年など複数年で見てみるのが良い。少なくとも2年分は見てみよう。
⑦投資キャッシュフローが営業キャッシュフローを大きく超えている場合には、何か大きな投資をしている可能性がある。その勝算が大きければ、今後業績拡大が加速する可能性もある。
(P.295)
 
【PERによる将来株価の予測】
ファーストリテイリングはLife  Wear(究極の普段着)を開発して世界に広めるというコンセプトで長年商品開発を進め、国内事業で業界トップの体制を確立しつつ、海外展開も軌道に乗せてきました。海外売上高は国内売上高に並ぶところまで育ち、今後は海外売上高を大きく伸ばして国際的な企業として飛躍していくことが期待されます。
売上高は2018年8月期に2兆円に乗せた後は、コロナ禍などもあり足踏みしていますが、中期的に3兆円を目標としています。3兆円を達成したあとも海外での拡大余地は大きく、Life Wearの提供という強みを向上させていくことができれば、長期的な安定成長を続けることも可能ではないかと思われます。
2022年8月時点での1株益、PER、株価の状況は図6-7の通りです。
1株益は過去最高の水準で、PERは33.4倍とかなり高くなっています。同社の強みや将来性の高さが市場ですでに高く評価されています。
過去の利益増加ペースは5年で1.5倍程度であり、そのペースが順調に続くというのが5年後のシナリオ①です。これまで通りの順調な成長が続けば、市場では高い成長率がさらに続く期待が維持されて、PERも30倍前後をキープできる可能性があるでしょう。そうなると、株価は10万8000円という計算になります。(1株益がもとの2447円から1.5倍で約3600円、3600円×PER30倍=108000円という計算)
比較的強気なこのシナリオでも、株価上昇はそれほど大きくは期待できない計算になります。
一方、思い通り成長できず、1株益が5年後にも現状維持に留まるシナリオ②も想定しておきましょう。その場合、成長期待ははげ落ち、PERは標準的なレベルの15倍くらいに落ちることも考えられます。そうなると、株価は3万7500円程度という計算になります。
(2500円×PER15倍=37500円)
(P.316~317)
→PERはこのように、将来の株価の予想に用いることができる。
 
【純金融資産を加味したバリュエーション】
株主価値(発行済株式の価値の合計)=税引き後営業利益(営業利益×0.7)×妥当PER(成長性に応じたPER)+金融資産(現金・預金・有価証券・投資有価証券の合計)-有利子負債(銀行借り入れ社債などの合計)
(P.322)
→余剰資金を多くため込んでいる場合の計算式
 
【PBRとROEの関係】
ニッセイアセットマネジメントの研究によると、PBRとROEには相関関係が見られるということです。
この関係を式にすると、
「妥当なPBR水準=1+(ROE-8)×0.15」となります。(P.330)
トヨタ自動車の2022年現在のROEは9.0%。この式に当てはめると、1+(9.0-8.0) ×0.15=1.15となり、当時のPBR1.1倍と比べて妥当な水準と判断できる。
 
【決算スケジュールと注目ポイント】
本決算(4月後半~5月半ば)…1年間の決算
・事前の予想値を達成できたか
・前年、終了年度、新年度と3年分の業績推移は順調か
第1四半期決算(7月後半~8月半ば)…3ヵ月間の決算
・第2四半期や通期の予想と比べて、前年比の伸び率は順調か
・通期の予想に対して、進捗率はどうか(25%が目安)
第2四半期決算(10月後半~11月半ば)…6ヵ月間の決算
・予想値を達成できたか
・通期の予想と比べて、前年比の伸び率は順調か
・通期の予想に対して、進捗率はどうか(50%が目安)
第3四半期決算(1月後半~2月半ば)…9ヵ月間の決算
・通期の予想と比べて、前年比の伸び率は順調か
・通期の予想に対して、進捗率はどうか(75%が目安)
(P.349)
→3月決算企業の場合、4月決算の会社は1ヵ月、5月決算の会社は2ヵ月後にずらして考える
 
【配当可能年数の計算】
配当可能年数=利益剰余金÷発行済み株数÷1株配
10年を超えると配当を維持する余裕度が「まずまず高い」、20年を超えると「かなり高い」、と判断できる。
(P.389)
 
【ダウの犬戦略】
世界的優良企業を厳選したNYダウ採用の30銘柄の中で、配当利回り10銘柄に同じくらいの金額を分散投資する戦略。
年に1度、配当利回りランキングに基づいて銘柄入れ替えを行う。
日本株の場合は、TOPIXコア指数採用30銘柄でこれを行う。
より銘柄を厳選した「ダウの犬5銘柄戦略は」やり高いパフォーマンスが期待できる。
(P.394)
→5銘柄は機械的に選ぶのではなく、業種を分散するなど取捨選択する。
 
【株価は物価を凌駕する】
長期的に見ると株はインフレに非常に強い資産であり、インフレを上回って上昇することが多いです。
たとえば、トルコは2022年9月現在、CPI上昇率が前年比80%前後で推移しています。
1年前に比べて物価が1.8倍になっているわけです。しかし、株価指数は1年間で3倍程度になっています。
アルゼンチンは、2012年から2022年にかけて物価が約18倍になりましたが、株価指数は約70倍になっています。
高インフレになっても企業活動は続きますし、強い企業であれば、インフレを販売価格に転嫁して収益や成長力を保つことも可能です。
長期的な成長性を持つ企業に投資すれば、株価上昇や高配当も享受でき、さらに、インフレリスクにも対応できる可能性があるわけです。(P.433)
 
【バブルのとき何が起きたか】
金融政策は、景気や企業業績と並んで株価を動かす非常に重要な要因の1つです。
1980年8月から1987年2月の6年半で10回連続合計6.5%の利下げが行われ、政策金利は9%から2.5%になり、この超低金利が2年近く続きました。この間、日経平均は7000円前後→38915円と5倍以上に上昇しました。1980年代の日本株のバブル相場を起こした要因の1つは、この金融緩和であったといえます。
1989年にバブルの懸念が出てきたため、景気と相場の過熱を抑えるために1989年5月から1990年8月まで5回連続合計3.5%利上げしました。最初の2回の利上げでは株価上昇が止まりませんでしたが、3回目以降に株価は急落し、日経平均は1989年12月から1990年10月までの10ヵ月間で38915円→20221円と48%安となりました。バブル相場を崩壊させた要因の1つは、この金融引締でした。
1991年7月からは利下げに転じて、1995年9月まで4年2ヵ月間で9回連続合計5.5%利下げして、政策金利は0.5%という超低金利水準になりました。
この期間はバブル崩壊の後遺症がひどくて、利下げ効果も一時的には出ることがあるのですが、あまり長続きせず、必死の利下げにもかかわらず株価は安値を更新し続けていきました。
この事例のように、経済環境によっては金融政策の効果が表れづらいこともあります。
金融緩和自体は株価上昇要因になりますが、それ以上に株価を下落させる要因が強く働いている時は、株価の低迷が続いてしまうこともあります。(P.439)
→いま再びバブルと同程度の水準まで株価が上昇してきている。一方、企業業績が先進国と比較して群を抜いているとは言い難い。
いずれ再び、バブル崩壊のような事態がきてもおかしくない。その時が来たら安く株を買えるよう、資金を確保しておこう。
 
【配当金受領方式】
配当金受領方式は、NISAを申し込んだ人が選択する項目です。「株式数比例配分方式に変更する」にチェックを入れることで、NISAで買った株の配当金がNISA口座に振り込まれ非課税扱いにすることができます。(P.487)
→口座開設の際に他の選択肢を入力しないよう注意しよう。