ねこみんの投資生活

ふつうの塾講師が適応障害をきっかけに投資を勉強していくブログです

【読書16冊目】お金がどんどん増える「長期投資」で幸せになろう 澤上篤人

【日本の財政悪化の要因】
1980年代後半のバブルで発生した不良債権問題の後始末を皮切りに、景気対策やら高齢化問題やらで財政負担は急増した。一方、日本経済の成熟化で成長率は鈍り、税収は伸び悩んだ。これが、財政赤字急拡大の第1要因である。
1990年代を通していわれ続けたのが、「銀行や企業を潰してはならない」ということだった。景気も急悪化するし、大量失業の発生も懸念される。それは絶対にマズイということで、バブルに踊った金融機関や企業を生き永らえさせる政策を優先した。
その結果、いわゆる「ゾンビ企業」を大量に跋扈させて今日に至っている。
ゾンビ企業は生産性も低く、社会にさしたる富も生まない。国の税収にはそれほど貢献しない。それどころか、税金でもって辛うじて息をつないでいるところも多い。
これが、財政悪化の第2要因である。
さらには、景気対策と銀行救済で、日本は1995年から超低金利、そしてゼロ金利政策へと舵を切った。それ以来ずっと、家計の利息収入を奪い続けている。
これが、日本の個人消費を低迷に追い込んだ最大の要因だ。
貯蓄志向の強い日本の家計から利息収入を奪うのは、最低最悪の政策である。通常なら30兆円前後はある利息収入がゼロ同然となれば、個人消費は落ち込むに決まっている。
個人消費が伸びないから景気はもたつき、税収も伸び悩む。一方で、景気浮揚のための予算はかさむ一途となる。これが、日本の財政悪化の第3の要因である。
消費税の導入が遅れ、税率の引き上げがなかなか進まなかったのも大きい。それに対し、景気の低迷がずっと続き、法人収入や個人所得税収が伸び悩んだ。その結果、恒常的な税収不足が日本の財政悪化を招いた。これが第4の要因である。
三重苦、四重苦が重なって、日本の財政はどんどん悪化していったわけだ。(P.64~66)
 
【上辺の景況感?】
金利上昇を想定しておいた方がいい。最近は先進国中心に、中央銀行の力を信用し過ぎている。その「しっぺ返し」は必ず起きる。
金利を引き下げ、資金を大量に供給すれば、景気は上向く。各国政府はそう言って通貨の番人であるはずの中央銀行に、大量に紙幣を刷らせて景気対策の役を押しつけているのだ。
ヘリコプターマネーでも構わない、とにかく資金をばらまけば、それで経済は動く。そう信じて、各国は一層の金融緩和に拍車をかけている。
恐ろしいほどの金融に対する過信である。そう遠くない将来、この金融万能主義に対する反動を、世界は思い知らされることになろう。
実際、限界は見えてきている。日本も世界も資金を大量にばらまいているが、それはうわべだけの景況感を醸し出しているにすぎない。株価や不動産価格などをバブル的に押し上げてはいるが、どこの国の景気もさっぱり盛り上がってこない。それは日本に暮らす読書の皆さんも実感しているところではないだろうか?
各国の政府当局は懸命に景気を押し上げようとするものの、広く国民の間まで経済活動の活発化を行き渡らせてはいない。一部の人たちがカネ余り景気を享受しているだけだ。
これは、資金をばらまいて取り繕っているにすぎない「ハリボテ景気の限界」を示唆している。所得格差の拡大とか中産階級の没落とかいわれるのも、富が社会に広く行き渡っていないことの象徴だ。(P.70~72)
 
国債はいずれ暴落する】
では、金融万能主義に対する反動とは?世界的な金融緩和の先進国のゼロ金利政策をいいことに、低利回りの国債社債の発行が相次いでいる。マイナス利回りの国債を1800兆円もの資金が買い群がっている。
つまり、世界中の投資家や金融機関が、異常なほど低利回りの債券を大量に抱え込んでいるわけだ。ずっと保有していても、投資収益なんてほとんど期待できない。
マネーというものは、常により高い収益を求めてやまない。現時点でこそ、低利回りやマイナス金利に甘んじているものの、「機会あらばより高い利回りに飛び付こう」と、虎視眈々としている。それが、マネーの習性である。
従って、少しでも高い利回りを見つけた瞬間、マネーはそちらへ飛び移っていく。
そうなると、現在保有している低利回り債など、もはや妙味はない。つまり売却という行動に出る。より高い利回りという情報は瞬時にマーケットを駆け巡り、どの債券投資家も乗り換えに走る、これが債券相場の値崩れの引き金となっていく。(P.72~73)
国債暴落の予想。日銀が国債を買い増し続けて500兆円近いという。いずれ破綻をきたすことは容易に想像がつく。「国は個人を守れない」という前提に立って、資産を守る策を講じる必要があるだろう。
 
【消費税の必要性】
一国の経済が発展拡大期にある間は、成長率も高く国の税収入は安定している。企業からの法人税も個人の所得税も、どんどん増えながら国庫へ入ってくる。この段階では、法人税所得税といった「直接税」(納税義務者と税負担者が同じ税金)で十分に財政運営を賄うことができる。
しかし、成熟経済の段階に入ってくると、成長率は鈍り直接税による税収入もガクンと落ち込む。一方、成長促進などの景気対策予算や社会保障費は膨れ上がる。その結果、財政は赤字に転落してしまう。
この状態が続くと、財政赤字で国の借金は増える一途となる。かといって、法人税や個人所得税をあまりに引き上げると、景気は落ち込み一層の対策予算が求められることになる。大きなジレンマに陥るわけだ。
欧州諸国も、この成熟経済特有のジレンマに直面した。そこで編み出したのが、付加価値税といわれる間接税の制度である。法人税や個人の所得税を、そうそう引き上げるわけにはいかない。
ならば、付加価値税を導入して、国民に広く薄く負担してもらうしかない。毎日の生活消費で、少しずつ税金を収めてもらうのだ。それでもって、国の財政運営を賄い公共サービスを維持していく。
1970年代から少しずつ導入されていった欧州諸国の付加価値税は、今や20%前後にまでなってきている。(P.89~91)
→内容の是非はともかく、消費増税の必要性が国民に周知されていないのは、間違いないことだと思う。これは報道の責任も大きい。
 
【成熟経済は適者生存の世界】
成熟経済に突入して、企業経営は難しくなったとよくいわれる。
確かにマスコミなどでは、そういった見方が一般的だが、筆者に言わせればむしろ逆だ。
右肩上がり三角形の枠組みが消え去ったことで、企業の経営がすごくダイナミックになってきているのだ。だから、個々の企業によっての浮沈が激しくなっているのだ。読者の皆さんにも、そう理解してほしい。
企業規模の大小に関係なく、強いところは強い。弱いところは弱いで、はっきりと色分けされていく。そこが、成熟経済の面白いところである。
成熟経済に入って、企業経営に厳しさが増したのではない。「みんな一緒」でやってこれた、幸せな時代が終わっただけのことだ。
(P.98)
→本当に生活に必要な商品、サービスが生き残っていく。長期投資でお金を増やすなら、そうした企業に投資すべきだろう。
 
【日本国民の購買力は大きい】
成熟経済について論じる際に、一つ押さえておきたいことがある。それは、成熟経済では成長スピードこそ鈍るものの、もう既に出来上がっている経済の規模、つまり国民1人あたりの購買力は、極めて大きいということだ。
確かに、今の日本と中国と比べるに、日本経済の成長スピードは格段に低い。国際通貨基金(IMF)が2019年10月に発表した世界経済見通しによると、2019年の成長率見通しは中国の6.1%に対し、日本はわずか0.9%。14億人の民を抱え、成長著しい中国経済から見ると、日本経済の将来可能性はそれほど期待は持てそうにない。
ところが、だ。国民1人当たりの生活消費の水準、つまり日本人の購買力は中国人の5~6倍もあるのだ。たとえ日本の人口が減っていくとしても、一人ひとりの生活レベル、すなわち消費能力は、今後も間違いなく維持される。(P.102~103)
→生活必需品への消費は、今後も続いていくだろう。ただ購買力については、世代格差が大きいように思う。
 
金利を上げて消費を促す】
一刻も早く、ゼロ金利とかマイナス金利政策を廃止して、通常の金利水準に戻すべきである。せっかく898兆円もある個人の預貯金マネーだが、現在は年間に1000億円に満たない利子収入しか家計にもたらしていない。
金利が3%の水準になれば、年間で26兆円もの利子収入を生む。20%の源泉税を支払った後でも21兆円の手取りだ。その資金が消費として向かえば、新しい産業が続々と生まれるのだ。(P.110)
 
【応援したい企業に投資する】
多くの一般投資家は「株を売買」している。株を買ったり売ったりすることで、儲けようとする。一方、われわれ長期投資家は「企業を応援」しようとする。応援しようという以上は、皆が売り逃げに走って株価がひどい安値にまで売り叩かれている時ほど、応援のしがいがあるよね。
「この会社を何が何でも応援するぞ!」という強い意志があるからこそ、暴落相場を平気な顔して買いに行けるのだ。むしろ、暴落相場になればなるほど、「オレたちが応援に行かなかったら、誰が応援するのか!」と闘いモード全開となる。
そう、われわれ長期投資家は単に買うのではなく、企業の株主になるのだ。それも、熱く応援しようという意志と意欲を高めてだ。だから暴落相場でも、良い企業なら平気で買えるわけなのよ。(P.137~138)
サイコロジー・オブ・マネーでも、投資対象に思い入れを持つことが「合理的な」戦略として紹介されていた。数値はどうしたって上下するので、計算だけで長期保有することは極めて難しいことは、想像がつく。
 
【指標だけで判断しない】
下手に経済や投資の勉強をすると、暴落相場では「変えない理由が、山ほど出てきて」、それに振り回されるのがオチ。何しろ、相場が暴落するような局面では、すべての投資指標が買うどころか、売り急ぎを示してくるのだから。(P.159)
→指標が教えてくれるのは、その瞬間のことだけだと考えよう。
 
【長期投資の本質】
長期投資の本質をズバリ言えば、「将来の納得に対し、今の不納得で行動する」に尽きる。
「将来の納得」とは、5年後、10年後のその企業の投資価値の高まりである。それを読み込むのだ。企業が世のニーズを先取りして、しっかり経営を続けてくれれば、業績は後から付いてくる。つまり、投資価値は将来に向けて高まっていく。
「今の不納得」とは?業績が低迷し、「こんな株、とても買えないよ」と散々ケチをつけられたり、株式市場で売り叩かれたりすることだ。誰も買う気になれない、だから「今の不納得」である。
われわれ長期投資家は個々の企業を徹底的にリサーチして、5年後、10年後の姿をあれこれ推測する。その作業を通して、「この会社、今は厳しいけど、5年先あたりから業績すごく伸びるぞ」と期待できるなら、安値の間にたっぷりと仕込んでおこうとなる。
(P.169~170)
→将来の企業価値を買う。5年、7年、10年といった長期のスパンで成長を待つ。そうした企業をどう見極めるか、経験と勉強を続けたい。
 
【長期投資の公益性】
「これは立派だ」とたたえたくなるような企業がもっと増えていけば、社会はもっともっと素晴らしいものになる。そこで問われるのが、われわれ長期投資家の責任だ。
多くの投資家はただ、「お金さえ儲かればいい」で、自分の今の幸せしか考えない。
機関投資家は毎年の運用成績に追いまくられている。そういった投資家たちばかりだと、企業の経営目線も短期志向となってしまう。
一方、われわれ長期投資家が10年先、20年先を見据え、こんな社会にしていきたいと熱く願えば、投資対象とする企業も厳しく選別しなければならない。社会にとってどちらの投資がいいのかは、おのずと分かるはずだよね。
そこに、もっともっと一般の人たちにも参加してもらい。きっかけは財産づくりでも、何でもOK。多くの人々に長期投資の世界に入ってきてもらうことで、「良い企業を応援しながら、より良い社会をつくる」ことを、皆で実践していける。(P.181~182)
→長期投資に参加することは、国の未来を見据えることでもある。教育という仕事との相性は頗る良いと感じる。
 
【信託財産は保証されている】
一般的に銀行預金は安全と信じられているが、実はそうとは言えない。銀行に預けた皆さんの虎の子は、そのまま銀行の運転資金の一部に組み込まれる。ということは、銀行が不良債権など問題を抱え込むと、皆さんの預金が無事に戻ってくるかに、黄信号が点灯することになる。
それでは困る、預金者を救済できるようにということで、2002年に「ペイオフ」という制度が定められた。1000万円までの預金に対しては、元本と利息を保証しましょうということだ。
保証するのは預金保険機構というところである。各民間銀行からの保険積立金をプールしておいて、1000万円までの預金を保証しようという仕組みだ。
その預金保険機構だが、資金プールは4兆円ほどしかなく、被保険預金に対する比率は0.4%にも満たない。これでは、とてもではないが預金が安心とは言えないだろう。
その点、投信の資産は信託銀行が預かるものの、それは信託財産としてであって、銀行の経営とは完全に分別管理されている。従って、ペイオフなんて制度に頼る必要もなければ、信託銀行が潰れても投資家の資産は無傷で保管され続けるのだ。
財産の置き場所として投信に勝るものはない。このことは、もっと社会認識となっていっていい。(P.195~197)
投資信託信託財産は信託銀行が管理していますが、信託財産は信託銀行自身の財産とは区分して管理(分別管理)することが法律で義務づけられています。
したがって、信託銀行が破綻したとしても、信託財産に影響はありません。投資信託は、破綻時の基準価額解約されるか、もしくは他の信託銀行に信託財産が移管されれば、投資家はそのまま投資信託保有することができます。
投資信託協会」HPより